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日本の庶民ブランドとも言われる「ユニクロ」の台湾1号店が10月7日、オープンしました。その日はなんと、7,000人以上の行列ができました。日本人の方々にはちょっと理解しがたい現象ではないでしょうか。そこで今回は、日本人の読者の皆さまにとって、おそらくさらに理解できない「台湾人の行列」のデータをご紹介しましょう。
Yahoo!民調中心が10月14〜15日に実施した「◯◯のために行列するなんて、あり得ない!」という調査によると、なんと「ハローキティのぬいぐるみ」が11年も前のことにもかかわらず、30%でダントツ首位。続く2位はカスタードエッグタルト(22%)、3位はミスタードーナツ(15%)でした。どれもこれも日本人にとっては、ごく普通のモノなのに、どうして台湾人はそんなに熱狂したのでしょうか?
自信のなさの表れ?
ぬいぐるみが最上位という調査結果から、台湾人は「エモーショナル消費」の傾向が強いことが分かります。これは、商品の品質を評価するだけでなく、「みんなが持ってるから欲しい」、「それを持っている自分になりたい」というエモーショナル(感情的)なニーズから行列するということです。
トップに輝いたハローキティのぬいぐるみは、カップルセットを「愛し合う証」と位置付けたマクドナルドのCMが功を奏し、発売後わずか7時間で57万個が完売しました。その裏には、台湾人は台湾のブランドに対する自信があまりなく、自分に対する自信もそれほどないことが見て取れます。
並行輸入とパクリも後押し
4位のユニクロ(14%)と6位のiPhone 4(8%)は、商品の品質が良いとはいえ、異常なほどの行列ができました。マーケティング効果が十分に表れたのだとも言えますが、並行輸入品と「パクリ品(模造品)」によって生まれた「本物への期待」も理由の一つだと思われます。
並行輸入品とパクリ品の存在は、本物のブランドの売り上げを阻害するように感じるかもしれませんが、実はそうとばかりも言えません。並行輸入品とパクリ品を昔から受け入れてきた台湾人は、本物が登場したときに、かえって本物への欲望がかき立てられます。ですので、今まで並行輸入品でしか手に入れられなかったユニクロとiPhoneの上陸が、このような尋常ではない大人気となったわけです。
目に見えるモノしか並ばない?
そんな台湾人ですが、目に見えないものには並ばないという特徴もあります。例えば、日本人は人気ゲームソフトのために長い列を作りますが、台湾人はあまり行列しません。ソフトウエアは、ユニクロの商品やiPhoneのように実物を友達に見せて自慢できないですし、他人が持っているのを目にして「あっ、わたしも欲しい」と感じる場面が少なく、台湾人のエモーショナルなニーズを引き出しにくいのでしょう。
このほか、台湾では違法ダウンロードに対する規制が日本よりずっとゆるいことも理由の一つです。ゲーム機のソフトウエアを、特定の機器などを通じてパソコン上で使用するためのデータに変換したものが、インターネット上で非合法に流通しています。無料で簡単にダウンロードできるので、わざわざ行列する必要はないと思うのでしょう。
共通の思い出作り
わたしもテレビゲームが大好きですが、やはりゲームソフトのために行列する必要はないと思っています。これまでに行列したことがあるのは、カスタードエッグタルトとミスタードーナツだけです。
4〜5年前、当時は高級品と見られていたミスタードーナツを2時間ぐらい並んで購入し、大学の友達に差し入れとしてプレゼントしたことがあります。その後、みんなで「あっ、本当においしい!すごい!」とはしゃぎながら楽しく食べたことを覚えています。今思えばまさに典型的なエモーショナル消費ですが、たった2時間で一生の共通の思い出が作れたので「お得」でした。行列した価値はそこにあったと思っています。
ワイズリサーチ 李俊達