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第22回 全民健保の問題点


コラム 台湾事情 作成日:2011年1月17日

台湾人研究所

第22回 全民健保の問題点

記事番号:T00027756

 全民健康保険(以下は全民健保)は戦後の台湾で最も規模が大きく、そして市民への影響も最も大きい社会福祉制度です。強制保険で、健康な人が病気になった人を助け、お金持ちが貧しい人を助けるような仕組みになっています。

 医療サービスが必要だけれど、十分なお金がない、そんな人たちが全民健保によって安い費用で治療を受けられるようになっています。しかし、充実している先進的な制度であるにもかかわらず、利用する市民は不満を持っています。今回はその理由を考えてみます。

「薬価ブラックホール」問題

 ヤフー!奇摩民調中心が1月1〜10日に実施した「全民健保で一番不満なことは?」という調査では、「薬価ブラックホールを抑えられない」が5割以上を占めダントツの首位となりました。「薬価ブラックホール」とは、分かりやすく言えば「薬価差益」の問題です。全民健保が病院に支給する薬価(医薬品の定価)が、病院が医薬メーカーから買う値段より高いことより生じる差益とのことです。資本主義の自由経済システムから見ると合法で合理的なことに見えますが、なぜ不満が生じるのでしょう。

 それは病院が医薬メーカーと「グル」になる場合があるからです。病院が健康保健局(健保局)にうそをついて、さまざまな名目で薬価を高くし、その差額で膨大な利益を得るというわけです。近年は不況のせいで健保費も払えない市民が増えているのに、健保局がこの問題を解決しようともせず、健保費を引き上げることで財務赤字をカバーしようとしたため、大きな批判を受けました。

地下ラジオの影響

 台湾では、政府の許可なしで違法放送を行う地下ラジオがニセ薬を販売し、服用した人が腎臓病にかかるケースが少なくありません。昨年4月に「台湾は人工透析患者数が人口比で世界一」というニュースもありました。背景には、漢方薬が身近な台湾人は、服薬への抵抗感が薄いこともあるでしょう。

 ニセ薬の流通による透析患者の増加が全民健保の赤字をさらに悪化させていることも、市民の強い不満となっています。

内部・外部の改正が必要

 全民健保は非常に先進的なアイデアですが、外部的な要因で今は膨大な赤字が出ています。同調査での「全民健保の崩壊が心配?」という質問には、48%が「すごく心配」と答えました。このほど、新たな保険料財源を加えた「第2代健保」が成立しましたが、赤字を解決するには、病院による薬価の不正申告と、地下ラジオに対する取締強化も不可欠ではないかと思います。

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