第52回 台湾映画『艋舺(MONGA)』の マーケティング


コラム 経営 台湾事情 2010年2月26日

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第52回 台湾映画『艋舺(MONGA)』の マーケティング

記事番号:T00021151

 
 今年の春節(旧正月)の最もホットな話題といえば、1980年代の台北市万華区を舞台に若者とヤクザの物語を描いた台湾映画、『艋舺(MONGA、万華の旧称)』に違いない。公開初日の2月5日、興行収入は1,800万台湾元に上り、全世界で絶賛上映中のハリウッド超大作、『アバター』の697万元を抜いて、この10年の台湾映画界で最高の記録を打ち立てた。筆者がこの文章を執筆している22日までに興行収入は2億5,000万元近くまで膨らんでいる。

 台湾映画はこの20年間、ハリウッド映画に押されて影を潜めていた。資金、撮影、公開、マーケティング…、各分野専門のプロフェッショナルがそれぞれを受け持ち、商売に長けたハリウッドにあらゆる面でかなわなかったのだ。  しかし、08年になると、台湾映画『海角七号』が公開され、4カ月間で興行収入5億3,000万元を記録した。台湾人だからこそ理解でき、共感できるストーリー展開や感情の動きに「捨てたものではない」と感じた観客の足が台湾映画に戻り始めた。

 そんな中、今年は『艋舺』がブレイクし、観客の共感と感動を巻き起こしている。ストーリーが良く、適切なマーケティングが行われれば、その土地ならではの映画こそが独自作品と歓迎され、皆が喜んで映画館に足を運ぶものだ。

 この作品は製作コスト7,000万元に対し、マーケティングには1,000万元が投じられた。テレビ、ラジオで絶えず宣伝し、どこにいても映画の広告が目に入る。インターネットのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、「facebook(フェイスブック)」はもちろん、映画の主演俳優が第18回台北国際書展(台北インターナショナル・ブック・エキシビション、台北世界貿易中心で1月27日~2月1日開催)でサイン会を開くなど、ありとあらゆる方法で宣伝された。今回は、そのマーケティング手法をいくつか見ていこう。

1. 話題作り

 ヤクザを描いたこの作品は、非常に議論を呼んだ。とりわけ、ある文化人が上映前の昨年11月にブログ上で発表した文章「映画『艋舺』に反対する訳」( http://blog.yam.com/upart/article/25436416 ) では、「復興の見込みのない万華地区を容赦なく打ちのめすだけでなく、過去の過ちをほじくり出して、艋舺に対するイメージを悪化させる」として、同作品が強く批判された。ところが意外にも、この文章に対する賛否両論が続出したことで、映画が上映前から広く注目を集める結果を招いた。

2. 関連グッズで企業と提携

 海外の映画作品のマーケティング手法をまねて、撮影が決まってからすぐに協力企業を見つけ、関連グッズを製作した。映画チケットにおまけとして付ける主演俳優や映画タイトル入りのカレンダー、ビーチサンダル、ヨーヨー、プリペイドカード、ティッシュペーパーケースなどで、映画の人気が上がるにつれ、協力企業も儲かる仕組みだ。

 コンビニエンスストアも商機を感じ、セブン-イレブンが弁当に映画チケット20元割引券を付けたほか、全家便利商店(台湾ファミリーマート)は『艋舺』オリジナルの悠遊カード(イージーカード、公共交通機関用ICカード)を発売、萊爾富(ハイライフ)は買い物客限定で『艋舺』のティッシュペーパーを販売した。

3. 配役のギャップ

 『艋舺』は、ストーリーやキャスト選びの段階から、市場ターゲットを慎重に見極めていた。人気のテレビドラマの主役級俳優に、台湾では珍しいチンピラ役を演じさせたことから、『艋舺』は撮影が始まった途端にメディアの注目を集めた。また、ストーリーも新鮮だった。ヤクザ物といえども、実際には若者が成長する過程で向き合う残酷な現実を映し出し、観客の共感を獲得した。

4. 地域とのマーケティング協力

 台湾では最近、映画で地域をアピールすることが流行している。『艋舺』は台北市万華区を舞台にし、台北市政府から補助金400万元を受けたほか、公的機関にも撮影協力を依頼した。なんと22時間も街を借りきって初日撮影セレモニーを行ったことも話題となった。郝龍斌台北市長が映画監督とともに撮影現場に足を運び、万華区のグルメや観光スポットをアピールしたことがテレビや新聞で報道され、さらに注目度が高まった。

 なんといっても『艋舺』が大ブレイクしたのは、優れたマーケティング手法だけでなく、映画作品そのものが一定以上の水準を持っていたからだ。作品がいまいちだったならば、どんなにうまくマーケティングをしても徒労に終わったことだろう。


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