記事番号:T00016513
前回はサルを使った実験による例え話をお話ししました。企業において管理職は、現状にとらわれず、経験則を絶えず見直し、考え方を改めると同時に、部下が旧来のやり方を打ち破って新たなアイデアを産み出せる場を提供することが重要と気付かれたのではと思います。では今回は、「背負われたサル」のお話をしましょう。
「背負われたサル」は、米国の学者による興味深い理論です。ここでの「サル」は「次の行動」を表しています。さて皆さん、今までにこんな経験はありませんか?
ケースA:
廊下でばったり出会った部下(甲)に、「ちょっとご相談したい件があるのですが…」と切り出され、事のいきさつを聞くうちに半時間が経過。自分の仕事になかなか取り掛かれない一方で、彼を手助けしてやるしかないと思えるが、解決策を提案するには情報が不十分。そこで、「今は話し合っている時間がないから、ちょっと考えてみるよ」と応じる。
ケースB:
部下(乙)が進ちょく状況の報告にやってきた。研究開発(R&D)部門と打ち合わせをしているが話が進まないという。そこで上司の威厳を見せるため、こう答える。「後は任せておけ。R&D部門の部長に電話しておくよ。」
ケースC:
部下(丙)が…(以下略)
これらのケースで「サル」はもともと部下に背負われていましたが、話をしているうちにサルはあなたの肩に片足を乗せ、「考えておくよ」「任せておけ」といった途端に飛び移ってきたのです。
上司と部下の立場逆転
これではあなたが部下の役目を引き継ぎ、部下があなたを監督することになったも同然です。立場は逆転し、「あの件はどうなっていますか?」と部下に何度も聞かれる羽目になります。
さらにあなたが提示した解決策が今ひとつだと思えば、部下は本来自分でやるべきだったはずのその業務を、あなたに押し付けてくるかもしれません。
部下の育てている「サル」を一度受け取ってしまうと、あなたは「サル」が欲しいのだと部下は勘違いしてしまいます。そうすると、あなたの受け取る「サル」はどんどん増え、部下たちが差し出す「サル」もどんどん増えていきます。
その上、あなたが何もかもやってしまって仕事を任せてくれないと部下は文句を言います。そうこうするうちにあなたは「サル」に埋もれ、いつまでたっても問題が山積みとなり、自分の「サル」の面倒を見る時間もなくなります。そして、優先順位が低いはずの問題を片付けようと躍起になり、自分自身の「サル」はおざなりに…
部下の業務を肩代わりしない
管理職の時間は、管理業務に充てるべきで、他人の「サル」の世話をしている場合ではありません。管理職となったからには部下に「サル」の面倒を見させるべきです。そうすれば、部下はしっかり担当業務を果たし、あなたは企画を立てたり、調整を図ったり、改善に務めたりといった重要な業務に時間を費やすことができます。すると、部門全体がうまく運営され、より高い効果を得られるはずです。
ワイズコンサルティング 荘建中
参考:
第44回 サルの例え話(1)