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第39回 寺院経営シリーズ2-宗教団体の経営管理


コラム 経営 台湾事情 作成日:2009年2月13日

台湾流経営策略 台湾の経営手法

第39回 寺院経営シリーズ2-宗教団体の経営管理

記事番号:T00013349

 
 台湾仏教の最大宗派の一つ、法鼓山(台北県)創設者の聖厳法師(享年78歳)が今月3日に死去し、台湾メディアに大きく取り上げられたことは記憶に新しいのではないでしょうか。台湾仏教界では聖厳法師のほか、中台禅寺(南投県)の惟覚法師、慈済基金会(花蓮県)の證厳法師、仏光山(高雄県)の星雲法師らがよく知られ、それぞれ多くの信者を抱えています。

 これらの宗教団体でも経営改革に迫られ、既にこれまでのやり方を改めてハイテクを駆使した最新の企業管理方法を採用しています。今回はそのマーケティング手法について見ていきましょう。

市場の住み分けと商品の差別化(マーケティング目標の設定)

 宗教団体も、サービスを提供して消費者の需要に応えるという点では企業と何ら違いがありません。ただ現状は「僧多粥少(物が少ないのに人は多いことを表す成語)」、市場競争で勝ち残るために、自らの団体の明確な位置付け(ポジショニング)を行い、信者(顧客ターゲット)を集めなければなりません。

 一般に「慈済(会)は功徳、中台(禅寺)は生死(の悟り)」と言いますが、これこそがマーケティングにおける市場の細分化(セグメンテーション)といえます。具体的にいうと、慈済会が困っている人を助け、その心を慰め、病院を建てることに重きを置く一方、中台禅寺は禅の修行で心の平安を得て、日々の生活を変えていくことを追求しています。

 また中台禅寺は、10年近い年月と50億台湾元(約132億円)ともいわれる資金を投じて、南投県埔里に台湾で最も高価な廟(寺院)を建てたことでも有名です。この廟は信者の心のよりどころとなる壮大な建築物で、2002年の台湾建築賞(主催・中華民国建築師公会)を受賞しました。皆さん、台湾中部の景勝地、日月潭を訪れる機会があれば、中台禅寺にも足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

仏法の現代化(プロモーション)

 お経は古くには石板の上に彫られていたといいます。その後、人の手で書き写され、印刷されるようになりました。今ではさらに進化し、「仏光大経蔵」の400万字がたった1枚の光ディスクに収められています。この1枚の中には「仏光大字典」も入っており、検索機能まで付いている優れものです。これでもう、教典を探し回らなくて済みます。

 また以前は、僧侶が教えを説く際には信者らのための広いスペースが、布教のためには教えを記した印刷物や新聞、雑誌などが必要でした。それが今では、インターネットやテレビで、たくさんの情報をあっという間に伝えることができるようになりました。

 慈済会は「大愛」、仏光山は「仏光」という専門の有線テレビ局を設けています。経典は持ち運びが手軽になり、PDA用の電子ブックやMP3で見たり聞いたりすることができます。ですから、PDAやiPodを使いながらお経を唱える僧侶に出会っても驚かないでくださいね。

資金調達方法の合理化

 台湾仏教界の財政はこれまで、主に信者からの寄付で賄われ、お供え物以外の高額な寄付には、寄付者の名を寺院の柱に記すという形をとってきました。しかし最近では、毎年決まった会費を集める会員制とする寺院も増えてきました。会費は会員のランクによって異なり、法鼓山では「栄誉董事(名誉取締役)」が100万元からとなっています。なお、分割払いも可能で、会員数は目下5,056人。一体、全部でいくらになるのでしょうか?

 また信者が灯明を供えたり、厄払いをしたり、寄付をしたりするために寺院まで足を運ぶことができないときは、なんとインターネットでこれらを行い、クレジットカードで支払うこともできます。財政確保のために金融機関と提携する宗教団体もあり、慈済会は中国信託商業銀行から「蓮花カード」を発行しました。このカードは、中国信託銀がカード利用額の一部を慈済会に寄付するというものです。

学校の開設と人材教育

 これまで僧侶は自ら修行に励んできました。一方最近では、高等教育を受けたお坊さんも増えており、仏光山には会計士、中台禅寺には建築士の僧侶がいます。先日この世を去った法鼓山の聖厳法師は、立正大学(東京都品川区)で文学博士の学位を取得しています。

 また僧侶の質向上を図る動きも盛んです。仏光山、法鼓山、中台禅寺には僧侶専門の学校が設けられ、さらにパソコンや英語も学べるといいます。仏光山には、ゼネラリスト僧侶のためのローテーション制度も産み出されました。このほか、一般市民も対象とした仏教が学べる慈済大学、仏光大学もあります。

 今どきの宗教団体は古いしきたりにとらわれず、企業管理を導入し、絶えず改善に努めています。企業経営者にも見習うべきところがありそうですね。

ワイズコンサルティング 荘建中

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