記事番号:T00009557
陳さんの「5毛しか受け取らない」、「2毛なら返す」という訳の分からないアドバイスに花季は首をかしげています。
陳:こじき業として成功したいのなら言う通りにしろ。始めは損をするかもしれないが、周りのこじきとは違うんだ。考えてもみろ、5毛のお釣りを渡したら「え、こじきがお釣りを出すのか?」と驚かれること間違いなしだ。そして相手は周囲にこう触れ回るだろう。「人民広場のこじきに1元渡したら5毛のお釣りがきたよ」とな。2毛を突き返された相手は「最低消費?お前こじきだろう?」って驚くだろう。そしてこう宣伝してくれるよ。「きょう奇妙なことがあったんだ。人民広場のこじきが面白くてね、2毛渡しても受け取らないんだ。最低5毛からしか受け取らないんだって」。やつらはただで宣伝してくれるんだ。やがてお前の知名度は上がり、無形資産が増えるぞ。人気が集まれば金には困らなくなるぞ。
花李は半信半疑ながらも陳さんの言う通りにすることにしました。
それから2週間がたちました。陳さんはどうなったか知りたくて人民広場に花季を見に行きました。広場の一角には人垣ができていて、かき分けてみると真ん前に花季がいました。彼の前には「有名な『職業こじき』花季」と書いた札が掲げてありました。花季はお金をもらったり、お釣りを渡したりと忙しそうでした。この時そばにいた男が「お金がいらない奴などいるわけない」と言うや100元札を取り出して「お疲れだな、釣りはいらないよ」と渡したのです。すると花季はさっと男の手を引っ張り、「ありがとう。でも5毛しか受け取らないよ」と言うやお釣りをたんまり握らせたのです。周りからは大きな拍手が起こりました。これを見た陳さんはとても満足して、花季に話しかけることなく帰っていったのです。
こじきではなくエンターテイナー
数日後の雨の日、花季がやってきました。
李:陳さん、おかげさまでこじきの仕事は上々です。雨でも降らなければここには来れませんよ。でもなんで成功できたんですか?
陳:今はみんな所得は上がっているが、精神的にますますむなしくなっていて、いつも刺激を求めているんだ。お前にお金を恵むのは同情ではなくて、面白くて独特だからだよ。だからお前はこじきではなくて、エンターテイナーなんだ。こじきをしながら観客を楽しませているんだ。
花季はうなずき、満面の笑顔で立ち去ったのでした。
社長の花季
それから数日後、陳さんの携帯電話が鳴り、聞き慣れた声が聞こえました。
陳:え、携帯電話買ったの?
李:情報の時代だから当然です。ところで、今新聞記者が取材に来ているんですけど、どう言えばいいんですか?
陳:宣伝のチャンスだ。こう言ってやれ。「卑しいこじきですが事業規則を守って5毛しか受け取ってません。お恵み価格を上げて皆さんに負担をかけることもなく、むやみに値下げして周りのこじきと競争を招くこともしていません」
数日後、陳さんは「職業モラルを兼ね備えたこじき」という新聞記事を目にしました。陳さんは「花季のことだ。有名になったもんだ。これは相談料でももらわなければ」と考え、また人民広場に向かったのです。広場の一角には以前よりもさらに大きい人垣ができていました。人ごみをかき分けて前に出ると、札は花季のままなのですが、別の男が座っていました。
陳:花季はどこだ?
男:社長?社長ならデパートの入り口にいるよ。
陳:やつはそんなところで何をしてるんだ?
男:社長はデパートの入り口に2号店を作ったんだ。俺はただの雇われ店長だ。
この話はインターネット上で流行している少し大げさな話ですが、マーケティングツールである4Pを十分反映してます。4Pとは、Product(製品)、Price(値段)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)のことです。
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