記事番号:T00009244
今日のビジネス社会においては、多国籍企業から個人商店に至るまで、経営戦略をうまく組み立て、厳しい競争を勝ち抜いていかなければなりません。今回は中国のインターネット上で流行しているこじきの物語を通じて、経営戦略の基本モデルについてお話をします。物語は商売に失敗してこじきになった李さんが、たくさんお金を恵んでもらいたくてコンサルタントの陳さんに相談するところから始まります。
こじきの経営相談
李:お恥ずかしい話ですが、私は以前店の主人をしていたのですが、商売に失敗して今はこじきで生計を立てています。こじきの仕事は誰でも始められるので、競争が大変激しいのです。なんとかいい知恵をお借りしてたくさんお金を恵んでもらえるようにしてほしいのです
これを聞いた陳さんは、「このこじきめ、ばかばかしい」と思ったのですが、心掛けを殊勝だとも感じ、「相談料はもらえないとは思うが、まあ相談に乗ってやるか」と請負ったのでした。
陳:こじきをするに当たって、まずは自身のブランド名を作るといい。お前の名前は?
李:李と申します
陳:それではブランド名を『花李』としよう。これで良いか?
李:結構です。いい名前です
陳:お前には経営をするのに決まった場所はあるのか?つまりこじきをするのに決まった場所はあるのか?
李:あります。普段午前中は人民広場にいるのですが、大変疲れるので午後はぶらぶらして、ついでにくず拾いをするのです
5毛しか受け取らない
陳:花李よ、お前にアドバイスをしてやろう。お前は専門的な道を究めよ。こじきやらくず拾いやらあれこれ手を出すな。こじきの道を究めた上で多角経営に乗り出すのだ。今後人民広場の主(ぬし)となれ。手には茶碗を持ち、その中には1元8毛を入れておけ。お前の前には『花李』と書いた札を掲げよ。こうすれば他のこじきとは全然違うし、自分自身のブランドもできている
陳さんはさらに続けました。
陳:これだけでは不十分だから、さらに物乞いのやり方で他のこじきと違いを出せ。経営を差別化するのだ。みんなに個性的で特色があり、他のこじきとは違うと感じさせるのだ。そして誰からお金を恵んでもらうにしても、5毛しかもらうな。みんなからお金を恵んでほしいと考えるな。覚えておけ、お前はある一部分の、自分がターゲットとする人たちのみを相手にするのだ。そうすれば、お前の茶碗にお金を恵んでくれる人は絶対にいるのだ。お前は恵んでもらったお金がいくらかちゃんと確認して、もし5毛だったら『ありがとう』と言うのだ。5毛より多いならば、例えば1元だったら、お金に目をくれずすぐにこういうのだ。『ありがとう、でも私は5毛しか受け取らないのです』。そして5毛のおつりを渡すのだ。逆に5毛より少なければ、例えば2毛だったらこう言うのだ。『ご好意に感謝します。でもここの最低消費価格は5毛なのです。この2毛はお持ち帰りください』
李:それじゃあお恵みはもっと少なくなるよ。だめだ、だめだ
皆さんは陳さんの戦略をどう思いますか?陳さんは「花李」に対し、さらにどんな提案をするのでしょう?このお話はまた
次回に続きます。
今回お話をした経営の基本モデルは、マーケティング・プロセスを構成する以下の3つのステップなのです。
1.「S(セグメンテーション)」。市場の細分化。市場を特定の性質によって分け、それぞれに最適な戦略・試作を立案・実施すること
2.「T(ターゲティング)」。特定層にターゲットを絞って持続的なマーケティングを展開すること
3.「P(ポジショニング)」。ターゲット市場の顧客の心の中に独自の位置(ポジション)を占めるために、企業が自社の提供物とそのイメージをデザインすること
ワイズコンサルティング 荘建中
第32回 「花李」の経営戦略(下)