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第48回 ベラヴィータの経営戦略


コラム 経営 台湾事情 作成日:2009年10月23日

台湾流経営策略 台湾の経営手法

第48回 ベラヴィータの経営戦略

記事番号:T00018744

 
 9月21日、台北市信義区に台湾最大級の高級ブランドショッピングモール「ベラヴィータ」がオープンした。イタリア語で「美しい生活」という意味の同店は、ブルガリ、エルメス、グッチなどのブランド品のほか、「セントルイスのフランス式シャンデリア、250台湾万元」「フランス王室御用達の食器セット23点、1,880万元(1点平均81万7,000元!車1台が買える!)」「オーダーメードの靴20万元」など、どれも「超」高級品を取り扱う。百貨店業界では、「富裕層専門のショッピングモール」と言われるほど、今、最も注目を集める高級ブランドショッピングモールだ。
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高級ホテルのような外観はひときわ目をひく(YSN)

カフェショップ経営の夢が転じて

 ベラヴィータ誕生のきっかけは、広達電脳(クアンタ・コンピュータ)の梁次震副董事長が妻と娘の夢をかなえたいという思いからだった。

 梁氏の娘は欧州の至る所で目にするような、ゆったりとくつろげるカフェショップを台湾でオープンさせるのが夢だった。梁氏や妻も賛同し、計画を進めていたものの、用地の購入に失敗。信義計画区A4ではなく、さらに広いA5を購入することになってしまった。

 その後は、「ショッピングモールをオープンさせて、カフェはその中で開けばいい」と計画を変更。夫人と3人の娘によって「コストを一切惜しまない」という方針の下、店舗計画が進められた。こだわり抜かれた外観は、ブラジルから輸入した花こう岩や、3Dカットしたガラスや石材を大量に使った。こうしてささやかなカフェショップの夢は、90億元を超える(用地に56億元、建設費に34億元)ショッピングモールとなって完成した。

百貨店の常識くつがえす

 ベラヴィータは地下4階、地上9階建て。建設面積は1万6,000坪で、営業面積は9,000坪、残りはすべて公共スペースだ。館内は吹き抜けになっており、外から明るい光が差し込む。また5つの噴水が設けられるなど、既存の百貨店にはないゆったりした空間がある。

 ベラヴィータがこれまでの百貨店と最も異なるのは、宣伝活動を一切行っていない(建物外観にもベラヴィータの名前は出していない)ことだ。オープン前にマスコミを使って派手な宣伝をすることはなかった。オープンを知らせるDMは、各ブランドのVIPのみに送られた。

 オープン日も通常選ばれる週末ではなく月曜日、7つのブランドが先行開業したのみと、さまざまな点で通常の百貨店の常識とは異なっていた。

超高級路線、調整の必要も

 梁氏は「ベラヴィータはどれだけもうけられるかが目標ではない。一つひとつの店舗でゆったり買い物ができるよう、ショッピングする人にカフェショップのようなくつろぎを提供したい」と語る。通常、土地が高い信義計画区では、建設用地を徹底的に使う。しかしベラヴィータは、欧州風の外観にするため20階建てられる建設用地を、9階までしか利用しなかった。

 このような「型破り」のショッピングモールで、梁氏がどう利益を上げていくのかが注目されている。業界関係者は、「館内のブランドは20余り。オープン1年目の売上高は20数億元程度で、利益を上げていくのは難しいのではないか」と分析する。一方で、「地価が値上がりすれば、10~20年後に経営を手放しても、それなりにもうけがある」という声もある。

 ベラヴィータはレストランからサロン、家具まで館内すべてが高級店で、またブルガリ、エルメスなど入居したブランド店は台湾最大規模を誇る。実際の顧客の買い物ぶりが気になるが、ある婦人はオープン時に2億5,000万元のアクセサリーをクレジットカードで払ったというから驚きだ。

 ベラヴィータは店舗誘致を、香港のパシフィック・プレイス(太古広場)を受け持ったハズバンド・リテールに依頼した。ショッピングモールが成功するかどうかは、やはり取り扱いブランド数が多いかどうかにかかってくる。より多くの選択肢を顧客に与え続けてこそ、顧客をつなぎとめられるだろう。

 ベラヴィータは、富裕層にターゲットに絞っているものの、ある百貨店業界の関係者は、「取り扱うブランド数が少な過ぎる。今は新鮮味で顧客を呼び込めるかもしれないが、長期的に顧客の消費を維持するためには、やはり多くのブランドを取り込まないと難しいだろう」と指摘する。今後、話題性と人気を維持するためには、経営戦略の調整が必要になるかもしれない。


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