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「29年の歴史が幕を閉じてしまった」台湾プロ野球リーグの人気球団「兄弟エレファンツ」創設者の1人、洪瑞河董事長がため息まじりに語りました。兄弟エレファンツは兄弟大飯店(ブラザー・ホテル)を母体企業とする球団でしたが、昨年のシーズン終了後、経営難から球団売却を決めたからです。その後、かつて「中信ホエールズ」(2008年に解散)を経営していた中国信託金融控股(中信金、CTBCフィナンシャル・ホールディング)が手を差し伸べ、同社傘下企業、華翼育楽と4億台湾元で譲渡する契約を交わしました。1月5日には新球団名「中信兄弟エレファンツ」が発表され、「兄弟エレファンツ」の名前が残っただけでなく、キャラクター、チームカラーともに引き継がれ、ファンの希望がかなえられました。
長年赤字続きのプロ野球専門誌「職業棒球雑誌」は、昨年12月に「ありがとう、兄弟エレファンツ」特集を組んだところ、大きな反響を呼びました
オーナーがプロ野球発足に奔走
兄弟大飯店は洪董事長を含む5人の兄弟が経営しており野球に大変な情熱を持っています。最初はホテル社員のサークル活動から始まりましたが、84年にアマチュア野球チームとして正式に設立しました。他球団の2倍の給与で選手を引き抜き戦力を強化。さらに1億元をかけて桃園県龍潭に練習用の球場を建設しました。
そして洪兄弟は次なる野望「プロ野球リーグ発足」のため奔走しました。長男の洪騰勝氏は大手企業の経営者を訪ね回り、交渉を重ねました。台塑集団(台湾プラスチックグループ)の創業者、故・王永慶氏や、長栄海運(エバーグリーン・マリン)が意欲を示したものの立ち消えとなるなど紆余(うよ)曲折を経ましたが、89年には洪兄弟の2年にわたる努力の末、ようやく「中華職業棒球連盟」(CPBL)が発足しました。アジアでは日本、韓国に次ぐプロ野球リーグの誕生となりました。兄弟エレファンツの他、▽統一ライオンズ▽味全ドラゴンズ▽三商タイガース──の4チームでスタートしました。
他チームは大手企業が経営に乗り出した中、兄弟大飯店の資本金はわずか1億5,000万元。それでも台湾野球の発展のため最も多額の資金を投入していました。
人気ナンバーワン
プロ野球リーグ発足から3年目の92年、兄弟エレファンツは念願の初優勝を遂げました。優勝を決めた夜にはファン約1万人が集まり台北市立野球場(現在の台北アリーナ)から兄弟大飯店までをパレードしました。その後、ファンの数は5万人近くに膨れ上がり勝利を祝う「兄弟!兄弟!」という掛け声が夜中まで響き渡りました。兄弟エレファンツの人気に強さも加わり盛り上がった同シーズンは、プロ野球リーグ全試合の1試合平均入場者数が過去最高の6,878人を記録しました。なお、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での台湾代表の活躍を受けて、台湾プロ野球が活気を取り戻した昨年でも同6,079人で、いまだ記録は破られていません。
チーム別年間入場者数もリーグ発足から12年までの23年間1位を守ってきました。しかし、残念ながら昨年は強力な助っ人マニー・ラミレス外野手を獲得した新チーム「義大ライノズ」に首位の座を明け渡しました。ただ、今年は心機一転、再び1位に返り咲くことでしょう。
またファンの特徴として、試合の最終回でどんなに得点差があろうと、全員が立ち上がり、逆転を信じて最後まで諦めずに声援を送る熱心さが挙げられます。
兄弟精神は永遠に
13年11月9日に桃園国際球場で行われた、アジアシリーズの壮行試合は兄弟エレファンツとしての最後の試合となりました。2万人の兄弟エレファンツファンが詰め掛けるという、これまでにない盛り上がりとなりました。私も兄弟エレファンツのファンですが、都合で会場に行けなかったため、テレビの前で泣きながら試合を見ていました。
「中信兄弟エレファンツ」となっても、台湾プロ野球界に刻まれた輝かしい栄光の歴史「兄弟精神」は、ファンの間で今後も途切れることなく語り継がれていくことでしょう。
シーズン最終戦は残念ながら統一ライオンズに負けてしまいました
段婉婷
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