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日本統治時代の1931(昭和6)年の、嘉義農林野球部の甲子園決勝進出までの奮闘ぶりを描いた台湾映画『KANO』が大ヒット中です。7日の大阪アジアン映画祭ではオープニング作品として上映され、終了後は感動のあまり涙を流す観客が続出、エンディングテーマの間、拍手が数分間にわたって鳴りやみませんでした。
大阪での上映成功は、日本での本格公開への期待感を高めました。前列中央は主役の永瀬正敏さん(威視電影提供)
映画のヒットとともに、台湾出身の野球部員を演じた素人俳優たちも注目を浴びています。主役級のエース「アキラ」こと呉明捷投手を演じた曹佑寧、強打者の蘇正生を演じた陳勁宏、お笑い担当の一番打者、平野保郎を演じた張弘邑らは多くの話題が報じられています。
全員1年間休学
『KANO』を制作した馬志翔監督は、約5,000人の高校球児、大学野球の選手から出演者をオーディションで選びました。学生である彼らは全員、映画撮影のため1年間休学し、半年間にわたって体力、日本語、演技の特訓を受けました。訓練当時は誰がどの役を担当するか決めていませんでしたが、ある日、曹佑寧が馬監督に「父親が休学に反対しているが、映画出演も一つの勉強だと思う」と話しました。馬監督はこのとき、曹佑寧は外見、性格とも呉明捷役にぴったりと判断して起用を決めました。
「アキラ」は野球エリート
曹佑寧は高校時代から台湾代表として18歳以下の野球のワールドカップに出場した実力の持ち主で、現在は野球の名門大学、輔仁大学の野球部で中堅手(センター)を務めています。先頃行われた台湾の全国大学野球大会では見事に優勝しました。ちなみにこの大会では映画を見たファンがスタンドに詰め掛けて「アキラ〜」と声援を送りました。
まるで呉明捷が現代によみがえったようです(果子電影提供)
普段は外野からボールを投げることが多いため、撮影当初はよく暴投をしていました。しかし猛練習の結果、見事に80年前の呉明捷のピッチングフォームを再現したのです。映画ではタカのような毅然(きぜん)とした表情と、素人とは思えない自然な演技で人々の心をつかみました。今後の進路については、プロ野球選手になれるように頑張ると話しています。
蘇正生役の陳勁宏は嘉義大学野球部の内野手です。嘉義大学の前身は嘉義農林なので、本物の後輩と言えます。赤銅色の肌、筋肉ムキムキの素敵な体つきは、米国映画『トワイライト』で人狼を演じたテイラー・ロートナーに似ていると言われます。特に鋭いまなざしで相手を凝視するときにはとても魅力を感じます。
平野保郎役の張弘邑は花蓮体育実験高校のサッカー部所属ですが、小学校のときに野球の経験があったため選ばれました。彼の演技とセリフはさりげなく面白くて、一言で観客の爆笑をさらいます。お笑い担当ですが、いざというときは人を動かす言葉が次々出てきます。台湾人出演者の中で、日本語のセリフが最も多くて長いです。きっと一生懸命勉強したのでしょうね。
息子・孫も出演
ちなみに、夏の甲子園の台湾地区予選大会で、嘉義農林と台北商業との決勝戦のシーンで、相手チームのピッチャーを演じたのは呉明捷の実の孫、高橋晃太氏です。また、台北商に勝って優勝した後、嘉義駅で迎えにきた嘉義の行政官は呉明捷の息子である堀川盛邦氏が演じました。
私は上映開始から10日間で『KANO』を3回見ましたが、見るたびに新たな発見があります。主な出演者の半分以上は素人ですが、野球経験者を起用しているため試合のシーンは臨場感にあふれています。野球のルールを知らない人でも、きっと映画が伝えたい野球というチームスポーツの団結精神に感銘を受けることでしょう。
段婉婷
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