記事番号:T00000129
● 経営コンサルタントの独立
手塚氏は大手コンサルティングファームで15年間コンサルタントとして活躍してきた。
過去にも何度か独立を考えた事があったが、15年間は修業期間と決めていたので機は熟したとコンサルタント事務所を構える事になったのだ。
手塚氏には長年蓄積したノウハウと長年支持してくれている顧客基盤があり、どうソロバンを弾いてもサラリーマン時代以上の収入は確実であった。
また経営コンサルタントとして様々な企業の経営戦略づくりに携わってきたので経営力には自信があった。
そして独立…
独立当初は過去のクライアントにご挨拶に伺うだけで面白い様に仕事が舞い込んだ。
最初は小さいながらも利益率の高い会社を目指していたが、あまりにも仕事が増えてきたので、以前いたファームから数人高給で引き抜いたほどであった。
二年目には会社は20人の規模になり、飲むたびに皆で将来の夢を熱く語ったものだった。
三年目になると仕事が急激に減ってきた。
原因は、一年目に仕事をくれたクライアント達も全て現在は以前手塚氏が働いていたファームに戻ってしまったのだった。
後からわかった事であるが、クライアントから仕事が面白い様に受注できたのは「長年お付き合いしていたので独立のお祝い」と「新しいサービスへの期待」からであったのだった。
その後手塚氏は四年目には社員のリストラを経験し、七年目の現在は元のファームに戻り「一コンサルタント」として活躍している…
● 経営コンサルタントの経営力
経営コンサルタントは属人的なビジネスであり、個人の経験やノウハウを水平展開する事が非常に難しいビジネスです。
職人芸的な事が皆簡単にできる様になれば急速に拡大するのでしょうが、そう簡単にはいきません。
クライアントのところでは「新しいビジネスモデルを創りましょう」と言っているのにも関わらず、業界のビジネスモデルはここ50年ほどはほとんど変化が無く、新たなビジネスモデルを創りきれていないのが現状です。
「いや、うちは新しいビジネスモデルで成功している」「コンサルタントは高貴な仕事で金儲けを考えてはいけない」等コンサルタントの皆様からはお叱りを受けそうですが、事実、新しいビジネスモデルで上場する規模になったのは日本では「ベンチャー・リンク」くらいしかありませんし、台湾ではコンサルティングファームの上場はありません。
「クライアントの問題解決で自社まで頭が回らない」のはわかりますが、「紺屋の白袴」にならぬようにしたいものです…
ワイズコンサルティング 吉本康志