ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第56回 台湾大車隊董事長 林村田氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2010年6月11日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第56回 台湾大車隊董事長 林村田氏

記事番号:T00023324

 
 先週末の土曜、5日に閉幕した台北国際電脳展(台北国際コンピューター見本市、コンピューテックス)を訪れた海外記者が「あり得ない」と驚いたことがある。それは、台湾のタクシー運転手が運転しながらテレビを見るだけでなく、テレビ電話をかけたり撮った写真をインターネットに投稿したりしていたことだ。

 台湾メディアで6月7日、こんな報道があったが、台湾人にしてみれば、とっくの昔に見慣れてしまって珍しくもなんともない光景だ。それに以前と比べると、タクシー運転手のマナーはよくなった方だ。個人タクシーの運転手が無線配車システムの導入されたタクシー会社に加わるようになり、これら各社がそれぞれ運転手の行動規範を定めているからだ。

 今回は、規模が大きく、サービスの品質に力を入れ、ブランド力で勝負しているタクシーグループ、「台湾大車隊」をご紹介しよう。

1日平均25万人が利用

 台湾大車隊は2002年に営業を開始し、シンガポール最大手のタクシー会社、コンフォートの全地球測位システム(GPS)を利用した配車システムを導入した。このことから巨額の資金負担に苦しみ、3人の入れ替わりを経て、最終的に経営のかじを取ったのが林村田氏だ。

 林氏は引き継いだ当初、経営が安定せず、3,000人以上いた運転手が離職して1,200人まで縮小するという目に遭った。そこで、会社の安定経営のため、林氏はGPS配車システムを手始めに、ソフト・ハード両面からシステムを強化し、コールセンターの規模を拡張した。

 後には第3世代(3G)移動通信システムを利用した車両と乗客のマッチングシステムを導入し、運転手と乗客双方の数が増えれば増えるほど簡単に配車できるようにした。これにより、運転手の平均収入は同業他社より3割以上多くなった。

 安定した収入が得られるようになれば、運転手もブランドを大切にし、ルールに従うようになる。台湾大車隊は目下、台北市の保有車両数7,500台以上を誇り、利用する乗客数は1日平均25万人に上る。

どの車両も快適な秘密

 林氏が運転手に求める基準は実に厳しい。車内でのタバコ、ビンロウを禁じるのはもちろん、顧客満足度を高めるために、回り道、スピード運転、短距離利用の乗車拒否、それに政治や宗教の話はタブーとした。乗客の指定する道順に従い、聞きたいラジオがあると言われれば、それに合わせる。こうしたことを、「サービス10カ条」に明文化している。

 車両は外観が新しく傷がないことだけでなく、サイズごとに車齢制限も定めている。▽排気量1,800㏄以下、車齢3年以内▽同2,000㏄以上、車齢5年以内──といった具合だ。こうした決まりがあるからこそ、台湾大車隊はどのタクシーに乗っても快適なのだ。

 林氏がいつも運転手に話していることがある。タクシーは運輸業ではなく、サービス業だ。顧客が満足しないとサービスが成功したとは言えない。どうやって満足させるかといえば、適切な服装で乗客を迎えるのはもちろん、乗車後も礼儀正しく、親切に接し、乗客の話しぶりや表情に注意しなければいけない──。

 例えば、乗客が目的地を告げた後、さっと目を閉じて休んでいれば、クーラーを弱めて、音楽の音量も小さくし、落ち着いた運転で、快適さと安心感を与えなければならない。おしゃべり好きな乗客だったら、適度に話相手となることも必要だ。

 こうしたルールをしっかり守らせるため、台湾大車隊は軍隊式管理の手法を採っている。運転手の募集、採用、教育に際し、1班を25人、1分隊を10班、1中隊を750人で構成する。それぞれの班長、分隊長、中隊長は、接客の際の考査を担当し、もしサービス10カ条に反した行為を見つければ、まず注意する。違反行為が何度も続くようならば、除隊を命じる。こうして、ブランド力を維持するのだ。

顧客開拓の新サービス

 林氏は、台湾大車隊のブランド価値向上だけでなく、顧客を開拓するためにさまざまな工夫を施している。

 例えば、ずいぶん以前から、通信キャリア全社と提携して、携帯電話からタクシー呼出専用電話「55688」をプッシュするだけでタクシーを呼べるようにし、乗客がタクシー会社の電話番号を覚えたり、調べる手間を省いている。

 このほかのサービスには、▽ホテル前に待機▽台湾高速鉄路(高鉄)駅と市内の送迎▽1カ月単位のチャーター▽法人会員向けの月ごとの利用料金支払いサービス▽大みそかのカウントダウンイベント時の送迎──などがある。

 今年は台湾最大のクレジットカード発行銀行、中国信託商業銀行(CTB)と提携し、「タクシー利用料金の無線支払いサービス」を開始した。しかも、このサービスを利用するための装置を、重大な違反がなく車両状態が良い運転手に対し、無料で貸し出すことで普及を図っている。

 林氏は、管理が良ければ、会社はもうかり、会社がもうかれば、運転手も稼げると話す。そして、稼げる運転手らは自然と協力し合って、台湾大車隊のブランド価値向上に貢献すると考えている。


ワイズコンサルティング 荘建中

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。