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第55回 東森国際董事長 王令麟氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2010年5月7日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第55回 東森国際董事長 王令麟氏

記事番号:T00022584

 
 東森国際の王令麟董事長は、かつて一代で巨大事業グループ・東森集団を築き上げ、米経済誌フォーブスの2007年の世界長者番付で、資産総額340億台湾元(約1,020億円)、台湾で7位、全世界で891位にランクインした実業家だ。当時、傘下の総事業会社数50社以上、グループの資産総額は1,000億元を超えていた。

 数ある事業の中でも、通信販売会社「東森得易購」が製作するテレビショッピングチャンネル「東森購物」は、年間売上高200億元以上と台湾最大規模を誇り、東森集団にとって最も重要な稼ぎ頭だった。

力覇事件、そして東森集団の解体

 07年、財閥グループの力覇集団の経営者一族がグループ資産を横領した事件(力覇事件)が明るみになった。王董事長は事件の首謀者である王又曽グループ総裁の息子で、複数の不正事件への関与が疑われて、同年7月に逮捕された。その後、東森集団への銀行融資が停止して財務状況が悪化、傘下の事業会社を手放さざるを得なくなった。「東森得易購」はシンガポールの投資ファンドに売却し、「東森購物」も手放すこととなる。王董事長に残されたのは海運事業を主力とする「東森国際」1社となった。

 翌08年5月、王董事長は保釈金3億5,000万元で釈放されたが、08年末に開かれた力覇事件の初公判で一審18年の求刑を受ける。誰の目にも、“東森王国”の栄光は過去のものになったことは明らかだった。

返り咲きを狙った奇襲作戦

 今年の元旦深夜。「東森購物」が放送されるはずのチャンネルで突然、全く別のテレビショッピング番組「U-Life」が放送され、視聴者を驚かせた。実はこの「U-Life」は「東森国際」の子会社の事業。王董事長がテレビショッピング業界への返り咲きを狙った“奇襲作戦”だったのだ。

 この一件の背景はこうだ。テレビショッピング業者は、ケーブルテレビ業者にチャンネル使用料を支払って番組を放送する契約形態を取っている。テレビショッピング専門チャンネル数は政府により最大9件に制限されているため、テレビショッピング業者は年度末になると、次年度の放送枠を確保すべくケーブルテレビ業者と契約を更新をする。

 「東森購物」は、最大手という地位に甘んじて危機意識が薄かったのか、ケーブルテレビ業者への支払いが常に遅れており、両者の関係は良好ではなかった。

 そこで、業界事情を熟知している王董事長は、「U-Life」のスポンサー探しと同時に人脈を駆使し、業界相場よりも30%高いチャンネル使用料、さらに初回から3年間契約という好条件を提示。結果、王董事長は「東森購物」と契約していたケーブルテレビ業者を「U-Life」に寝返らせることに成功したのだった。

 ただし、今回の「U-Life」放送は違法行為。ケーブルテレビの番組変更は、1カ月前に通信行政を管轄する国家通訊伝播委員会(NCC)に申請するよう義務付けられているにもかかわらず、無断で行われたからだ。NCCはケーブルテレビ業者に罰金を科したが、その後、民間事業間の問題との立場からそれ以上の介入はせず、「U-Life」は3月末から全台湾60社のケーブルテレビ業者のうち半数を以上の33社5チャンネルで放送を再開した。

 「東森購物」を退けた「U-Life」は、他社に先駆けて番組製作にフルハイビジョン超高解像度画質を導入した。これにより、視聴者は宝石や時計などの商品を、細部まで手に取るように把握できる。

 「U-Life」を成功させた王董事長は、裁判中の身にもかかわらず、その野心は衰えることを知らない。再び“東森王国”の名を世間に轟かせるため、虎視眈々とそのチャンスを狙っているのだ。


ワイズコンサルティング 荘建中

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