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第57回 晶華国際酒店集団董事長 潘思亮氏(1)


コラム 経営 台湾事情 作成日:2010年7月2日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第57回 晶華国際酒店集団董事長 潘思亮氏(1)

記事番号:T00023738

 
 晶華国際酒店集団(フォルモサ・インターナショナル・ホテルズ)は、株価が20台湾元そこそこで投資家には鼻にもかけられなかった状態から、潘思亮氏がアイデアを結集してビジネス力と明確な財務計画を打ち立て、「観光株の王」(6月29日時点の株価は399元)と呼ばれる地位と、ホテル業界で長期にわたり最高利益を続ける業績を築き上げた。さらに今年4月には、5,600万米ドルを投じて「リージェント」ブランドを買収(4月19日付ワイズニュース)。台湾企業による世界的高級ホテルブランド買収は初めてのケースだ。

SARSもアイデアで乗り切る

 財務危機に陥っていた東帝士集団(トンテックス・グループ)に出資し、2000年に台北晶華酒店(グランド・フォルモサ・リージェント・タイペイ)の経営を引き継いてから10年、潘氏は度重なる危機を乗り越えてきた。

 例えば03年の新型肺炎(SARS)発生時、ホテルからは客が消え、わずか1カ月で売上高は半減した。しかし1,000人の従業員の生計を考えてリストラは行わず、その代わり、高級住宅向けに「徹底クリーニングサービス」を開始。洗濯が難しいカーテンやじゅうたんなどのクリーニングをホテル従業員が手掛け、大いに歓迎された。

 また当時、多くの企業が集団感染を恐れ、リスク分散のためにオフィスを分離していることに気づいた潘氏は、ホテルの客室をこうした企業に提供することを思い付いた。こうして小さなビジネスを積み重ねた結果、SARSが猛威を振るったこの年、同ホテルは純利益6億1,100万元、利益率31.87%という好業績を記録した。

顧客が口に出す前にサービスを

 このほか同ホテルは、顧客ごとに専属の執事が24時間待機する「TAI PAN(大班)※ RESIDENCE & CLUB」を18~19階で始めた。このサービスを実施するため、かつてヨルダン王やエリザベス女王に仕えた経歴を持つ執事を英国から呼び寄せ、従業員に訓練を受けさせた。マイケル・ジャクソンやマライア・キャリーといった大スターも、来台時には至れり尽くせりの同サービスを利用したという。「TAI PAN」サービスの最も重要な原則は「顧客が要求を口にする前にサービスを提供すること(serve before you say)」だ。

※ TAI PAN(大班)とはもともと広東語で「代行」の意。古くは広東人が東インド会社広州商館代表や外国商船の船長を呼ぶ際に使用した。ブリタニカ百科事典では「強大な権力と影響力を持った商業界の重要人物、または多国籍企業でアジア市場での経営を任されている責任者」と説明されている。

 また潘氏は「少ないリソースで有力ブランド構築」を経営の原則とする。同グループが運営するサービスアパート「新光信義傑仕堡」(新光ジャスパービラ)、ブランドレストランなどは、比較的少ない資金で新たな成長の原動力を生み出した好例だ。「リージェント」ブランド買収もこの原則の延長線上にあるといえ、潘氏は「5,600万米ドルというと巨額に聞こえるが、台湾でホテルを一軒建てる費用の3分の1で多くのホテルを獲得でき、同時に国際化も図れるならば割に合う」と語っている。

 さらにホテル経営について、「収入は実際のところ多いとは言えないが、ほとんどが利益となる。だからホテル経営はもうけは少ないが、赤字にはならない」と強調する。

朝思いついて午後に成果が見たい

 潘氏は強い決断力を備え、あらゆることに対してスピーディーかつ的を得たやり方で貪欲(どんよく)に進める。同グループの従業員は潘氏について「行動力と事業を推し進める能力が非常に強い」と指摘、「朝アイデアを思い付いたら、午後には成果を見ないと気が済まない人だ」と評する。

 会議の際、潘氏も従業員を叱りつけることはある。しかし、ミスをした者を叱ることはない。標的となるのは「すべきことをしなかった人」だ。「ステーキを焦がしてダメにしても、明日うまく焼けばいい」という考え方で、それでこそ従業員は思い切ったアイデアを試すことができ、グループが「イノベーション天国」となると信じている。

 また潘氏は、長く勤める優れた従業員を非常に大切にする。ホテル内のステーキハウス「ROBIN'S」の名称は、レストラン部門シニア協理、劉文秀氏の英名から取ったもので、こうした気遣いにより、社員の仕事に対する情熱をさらに引き出すことができるのだ。

 晶華集団の将来について潘氏は、高級ホテル、高級マンション、ショッピングモールを融合させた不動産管理のビジネスモデルに向かうと表明する一方、今後も最高級ホテルサービスの提供に力を入れ、「『リージェント』ブランドを再び世界で最も尊敬されるホテルにしたい」と語っている。


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参考:第59回 晶華国際酒店集団董事長 潘思亮氏(2)

台湾流経営策略台湾の名経営者

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