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第54回 王品連鎖餐飲集団董事長 戴勝益氏(2)


コラム 経営 台湾事情 作成日:2010年4月16日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第54回 王品連鎖餐飲集団董事長 戴勝益氏(2)

記事番号:T00022143

 
 先週の土曜日(4月10日)、台湾で高視聴率を誇るニュース専門チャンネル、TVBS新聞台を見ていたら、こんなトピックが30秒ほど報じられた。

 「台湾の外食最大手、王品集団はこの2日間、800万台湾元を投じて、株主総会を開いた。株主とその家族を無料で招待するため、マリンテーマパーク、花蓮海洋公園と1泊8,000元の5つ星ホテルを借り切ったのだ。王品の戴勝益董事長は、同社の幹部でもある株主245人とその家族、合わせて900人以上を招いたので、株主総会と言っても、家族の会食のようなものだったと強調した」

 筆者は本コラムの第2回でも戴董事長を取り上げ、ささいなことまでこだわって規定された「亀毛家族条款」や「自社株現物支給(分紅)」など、独特の企業文化を紹介した。今回は、2009年売上高が52億6,000万元に上る台湾最大の外食グループが、どのように急速な拡大とサービスの品質維持を同時に実現し、さまざまなブランドに成功経験を移植したのかなど、前回と違う角度から分析していこうと思う。

ワンプライスのセット料理

 王品集団傘下には、たくさんの事業体があり、商品、価格、サービスなど各方面から市場の細分化(セグメンテーション)を行っている。例えば、▽「王品台塑牛排」は丁重なサービスを追求し、ステーキを1,200元で提供▽和風創作料理の「陶板屋」は、中年の客層に合わせて450元▽一人用鍋物の「石二鍋」は、若者をターゲットにわずか198元──といった具合で、ほかに「夏慕尼鉄板焼」や「原焼原味焼肉」など、ブランドごとに位置付け(ポジショニング)が異なる。一方、大部分に共通するのは、ワンプライスのセット料金を設定していることだ。アルコールなど飲料も含まれているため、単品を追加注文する必要はない。

 このやり方は、戴董事長の思いやりの表れだ。来店客は予算に制限があっても、目にしたワンランク上のコース料理や高級な飲み物を注文しないよう友人に言い出すことはメンツが邪魔してできないもので、財布が痛む。そうすると、次回もまた来ようという気が失せてしまう。戴董事長は「客単価を上げて、来店率が下がるくらいなら、来店客の出費を抑えて、何度も友人を連れてきてもらう方がいい」と考える。

不満も迅速に対応

 戴董事長は、顧客の心をつかむため、どんなことにも妥協しない。出迎え、案内、メニューのデザイン、食器の置き方、目線、おじぎの角度、接客時のタブー、すべてにマニュアルがある。

 たとえば、どのブランドにも共通で規定されているのは、▽着席後1分以内にメニューを渡す▽3分以内に注文を聞く▽8分以内に突き出しを運ぶ▽12分以内に前菜を運ぶ▽17分以内にサラダを運ぶ──などだ。ブランドごとに違いがあるのは、来店時の声掛けの仕方や、スタッフの髪型、服装、姿勢などで、いずれにせよ細かく決められている。

 王品では、作業が単にマニュアル化されているのでなく、気遣いも重視されている。顧客に対して確実にサービスしようと、各店では食事の後、顧客の満足度を知る目的で、「VIPご意見カード」の記入を求めている。

 かつて筆者が友人3人と陶板屋で食事をした際、ちょっとしたトラブルがあり、友人は「ご意見カード」に不満を記した。カード回収後、最後のデザートを楽しんでいたとき、幹部クラスと見受けられる人物が謝罪に訪れ、なんとわれわれ全員にちょっとした贈り物をくれたのだ。店内にはまだたくさんの客がいたというのに、この対応の速さには本当に驚いた。また友人も、この店に対する不快感が一掃された。

 なお、この「ご意見カード」による顧客満足度に、▽経費率は適当か(ブランドごとに平均標準値がある)▽0800から始まる通話料無料のクレーム電話件数▽売上目標達成率▽離職率▽業績評価▽業務計画──を加えた「7大指標」は、店舗ごとに「ランキング」を作成し、管理されている。

 その上、これら7項目の総合ランキングもあり、月ごと、1年ごとに審査され、個人の評価にも組み入れられる。その結果は、「分紅」や人事異動に影響するのはもちろん、もし常にランキングの最後尾に位置していたならば、今のポストが危ういかもしれない。飲食店の経営は簡単そうに見えるが、成功するには何ごともおろそかにできないのだ。

 王品集団にとって、今回の株主総会が話題となったことでブランドイメージに与えた影響を考えれば、800万元なんて安いもの。王品の成功は、運によるものではなく、一つずつ作り上げたものなのだ。


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参考:第2回 王品連鎖餐飲集団董事長 戴勝益氏(1)

台湾流経営策略台湾の名経営者

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