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第75回 ボーナス90カ月分の赤鬼ステーキ店って?(赤鬼炙焼牛排 張世仁氏)


コラム 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2012年1月6日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第75回 ボーナス90カ月分の赤鬼ステーキ店って?(赤鬼炙焼牛排 張世仁氏)

記事番号:T00034722

 春節(旧正月)が近づくと、企業は春節ボーナス(年終奨金)を何カ月分支給できるかと計算し始めます。そんな中、サラリーパーソンがうらやむのが台中市のステーキチェーン店「赤鬼炙焼牛排」。一般社員でも7.5カ月分以上、中間管理職なら46カ月分が支給され、幹部の2人に至っては何と90カ月分!月給4万台湾元で基本給が3万1,800元とすれば、基本給ベースで計算してもボーナスだけで286万2,000元、年収は334万2,000元に達します。

 平日の食事時以外も満員となる、台中市で有名なステーキ店「赤鬼炙焼牛排」を経営するのは張世仁氏(44歳)です。店を始めたのは17年前、台中を代表する夜市(ナイトマーケット)「逢甲夜市」でわずか30万元をつぎ込んだ、夫婦2人で営むたこ焼き屋台でした。ステーキ専門店を作ったのは2005年のこと。逢甲店、公益店、崇徳店と相次いで3店を開きました。

新路線で参入

 張氏は、飽和状態のステーキ店市場に参入するに際し、3つのタイプの店があることに気づきました。タイプ1はサービスもバッチリの高級店、タイプ2は食べ放題のサラダバーが売り物、タイプ3は肉の質が悪く「まるで練り物を食べているような」安さが自慢の夜市のステーキ屋台です。

 張氏はいずれのタイプにも属さない新路線を模索しました。気の利いたサービスも食べ放題のサラダバーも所詮(しょせん)は付加価値にすぎないと採用せず、価格は手ごろな170~380元に設定しました。それでも肉の品質でお客を納得させるため、コスト全体の60%を食材調達に充てました。この比率は、一般のステーキ店(35%)、食べ放題店(45%)を大きく上回っています。ただ、これでは人件費20%、賃料10%を差し引けば利益は10%(一般のステーキ店は30%)しか残りません。

回転率を上げるために

 客単価が低い上に利益率も低いという条件でやっていくには、回転率を上げるしか方法はありません。といっても同店は、食事時間に制限はなく、来店客をさり気なく追い出すこともないといいます。一体どのような手法を採っているのでしょうか?

1.長いしづらい店内環境

 陳氏いわく、同店はサラダバーを設けていないため、お客がサラダを取りに行く時間を省略できます。また、店内は騒がしく、ゆっくりおしゃべりできる環境ではありません。その上、大半のお客は店の外に長い行列ができているのを見て、食事が済み次第すぐに席を立つそうです。

2.生産ラインのような分業体制

 また、店内スタッフのスムーズな連携プレーも回転率向上に貢献しています。同店のメニューは7コース、肉はチキン、ポーク、サーロイン(大・小)、フィレ、スペアリブの5種類だけです。まずホール係は、お客が行列に並んでいる間に注文を聞きます。

 注文を受けた厨房にいるのは、経験豊富なシェフではなく素人ばかりですが、陳氏が半年をかけて作り上げた作業マニュアルがあるので、誰でも3カ月もすれば手馴れたもの。肉の種類ごとに異なる鉄板に、焼く係、鉄板から取り上げる係、皿に飾り付ける係のスタッフがそれぞれ待ち構えています。完全な分業制を採っているため、料理が出来上がるのはあっという間です。

3.予約なしで空席をなくす

 同店は予約を基本的に受け付けません。「30分あれば1回転させられる。もし予約を全部受ければ、回転率は半分に落ち込む」というのが陳氏の弁。予約が午後7時ならば6時半には席を開けておかなければならず、もし予約客の来店が7時を過ぎれば、空席が30分以上も存在することになります。

 最近はニーズに応えて、一部で予約サービスを導入しましたが、あらかじめ席を空けておくのではなく、お客の来店後に空いた席を優先的に案内するというやり方です。無駄な空席は作りません。

高額ボーナスは宣伝目的?

 努力のかいあって、同店でのお客の1回当たりの食事時間は30~40分にすぎず、1日の回転率は15回に上り、同業他社の3倍以上だといいます。

 こうして上げた利益は、高額ボーナスで従業員に還元。これをテレビや新聞がこぞって報道し、「赤鬼牛排」の名が台湾に知れ渡ります。この時節柄、サラリーパーソンの話題に上がること間違いありません。最高のマーケティング戦略だと筆者は思うのですが、いかがでしょうか? 

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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