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ナイキ、アディダス、アシックス、リーボック、プーマなど世界的有名ブランドを顧客に持つ宝成国際集団(PCG)は1969年創業の世界最大の製靴メーカーです。従業員数は42万人。工場は▽中国▽ベトナム▽インドネシア▽台湾▽メキシコ▽バングラデシュ▽カンボジア──など世界各地に展開しており、鴻海科技集団(フォックスコン)に次ぐ台湾第2の製造メーカーとも呼ばれています。今回はPCGの蔡佩君執行長をご紹介いたします。
突然の執行長登用
蔡執行長は蔡其瑞グループ総裁の長女で、22歳でペンシルベニア大学ウォートン・スクールを卒業し、そのままPCGに入社しました。蔡氏は総裁の特別助理として10年間、マネジメントに携わってきましたが、2012年に突如、蔡其瑞総裁からグループの執行長に任命されました。
(1)組織改革
執行長になったばかりの蔡氏が最初にぶつかったのは、自分が生まれる前から会社で働き、功績も経験も豊富な「先輩」たちとの関係でした。
社内はメーカーごとの事業部に分かれており、中でもナイキ、アディダス、リーボック事業群の総経理らは強い権限を持ち、蔡執行長の指示を全く聞こうとしませんでした。そこで蔡執行長はまず、大規模な組織改革に着手し、全体で総経理を2年で3人、マネジャーも100人余りを配置転換しました。
明快な戦略
(2)戦略の見直し
組織を掌握し、次に行ったのが戦略の見直しです。蔡執行長は「本業回帰」を目標に掲げ、「製靴と販売」に注力することにし、これまで行ってきた本業以外の投資事業は、利益の有無に関係なく可能な限り処分してしまいました。
また中国で構える1万店以上の販売拠点にIT(情報技術)を導入し、不採算店舗を相次いで閉鎖。5,000店ほどまでスリム化を図った結果、今年第1四半期にやっと300万台湾元の黒字計上を実現しました。
(3)ベトナム現地での幹部登用
この他、同社売上高の3割をベトナム工場が担っていますが、数年前より問題の多かった中国人幹部から、台湾の大学卒のベトナム人華僑を幹部登用する形に切り替えました。今回ベトナムで発生した反中暴動でもベトナム人華僑の幹部が秩序維持に当たってくれたおかげで、被害を抑えることができました。
果断な決断で事態を収拾
ただ、同社はそれ以前から中国・東莞市で発生した社会保険をめぐる大規模ストライキなど、問題が相次いでいたため、売上高の3割を占めるナイキが発注先を変更するとの観測が流れました。
そこで蔡執行長は自らナイキに電話をかけ、事実関係を確認。ナイキからそのような事実はないとのリリースを出してもらうことで、事態を収拾してその手腕を見せました。
蔡執行長の手法は先代と似ていますが、勤続37年の詹陸銘・総管理部総経理には誕生日にメッセージ付きのチョコレートを送るなど、女性特有のきめ細やかさも併せ持っており、彼女は今後も明快な戦略を掲げ、明快な決断を行いながらグループ内での地位を着実に築いていくことでしょう。
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