ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00087331

＜登場人物＞
ワイズシステム総経理　宇都宮武則
本コラムの筆者です。

台湾Ｓ電工　山田新一総経理
1978年千葉県生まれ、上場企業Ｓ電工の営業企画課長から2018年に台湾Ｓ電工の総経理として初めての海外駐在。好奇心旺盛で何にでも興味を持つ。２児のパパ、趣味は車で家族旅行。

　居酒屋「ふじこ」の一番奥のテーブルに座る山田総経理と宇都宮。２人はこの店の常連です。山田総経理はお決まりの生ビール、宇都宮はおちょこで熱燗（あつかん）を口に運んでいます。

　「ふじこ」はこぢんまりとしたお店で、先代の女将（おかみ）さんが創業しました。今では、その味を継いだ娘夫婦、無口で照れ屋な大将と明るく気さくな２代目の女将さんが切り盛りしています。

　女将さんが、黄色の菜の花にかつお節をのせたおひたしを運んできました。

山田「お薦めはカニですね」

　ホワイトボードに大きく書かれた「今月のお薦め『カニ』。毎日産地直送です」が、目に入りました。

女将「はい、カニの季節ですから。毎日、万里（新北市）から運んでもらっていますので、まだ生きているのですよ。ご覧になりますか？」

山田「う～ん。見ちゃうとかわいそうで食べられなくなりそう」

事務処理の自動化に重点

　話をＩＴ（情報技術）に戻します。

山田「宇都宮さんが就職した頃のＩＴはどのようでしたか？」

　私は「そうですね～」と、大学を卒業して大手無線機器メーカーへ就職した85年ごろを思い出そうとしていました。

宇都宮「更衣室のロッカーくらいの、大きなコンピューターがありました」と大きく手を広げてみせました。

山田「１台で？大きいですね」

　その会社にあったのは、大型コンピューター「IBM4381」が数台で、ガラス張りで空調が完備されたコンピューター室に鎮座していました。

参考：IBM43XXシリーズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/IBM_4300

山田「コンピューター室ですか？最近はあまり聞かなくなりましたね」

宇都宮「その大型コンピューターは、基幹システムとも呼ばれた財務会計や給与計算、販売管理、購買管理、生産管理といった用途に使われていました。私は新人社員研修が終わるとシステム開発部に配属され、基幹システムを設計開発する仕事をすることになりました」

山田「そうなんですね。それでは、その会社ではかなりペーパーレス化が進んでいたのでしょう」

宇都宮「いいえ、全然です。当時のシステム化は、情報の集計など事務処理の自動化に重点が置かれていましたから」

　その頃のオフィスには大量の紙が存在しており、手書きが主流。手書きされて承認に回された紙の書類を最終的に担当者がシステムへ入力していました。

　出力もまた紙が主流でした。出力された３枚複写式の見積書を、担当者が社内控え用に１枚剝がし、残る２枚を封筒に入れて先方へ郵送していました。

山田「う～ん、今では信じられない非効率さですね」

宇都宮「メーカーでしたので、本社と国内外の工場、販売拠点をオンラインでつなげて、大量のデータを処理していました。それをコンピューターを入れたことで、手集計や手書きの必要が無くなり、当時は画期的だと思っていました」

大型コンピューターからＰＣへ

山田「現在のようにメールやＰＤＦに慣れた私からは想像もつきません。パソコンはあったのですよね」

宇都宮「80年ですと、PC-9801というＰＣは聞いたことがありますか？」

参考：PC-9800シリーズ
https://ja.wikipedia.org/wiki/PC-9800

山田「それとなく」

宇都宮「当時のＰＣはまだビジネス用には使われることはまれで、もっぱら趣味の世界でした。ちなみに日本語ワープロ『一太郎』が販売されたのが85年です」

山田「今使っているエクセルなどは、いつ頃できたのでしょうか？」

宇都宮「マイクロソフト（ＭＳ）の『Office』の発売は90年です。その前の80年代には、表計算ソフト『Lotus 1-2-3』が世界で一番売れていました。」

山田「おお、40年前に既に表計算ソフトがあったのですね」

　92年に日本初の商用インターネットサービスが始まり、「インターネット」という言葉は95年の流行語大賞のトップ10に入りました。ＰＣがビジネス、趣味を問わず幅広く普及したきっかけにもなりました。

　使い勝手の良さや費用対効果面から、大型コンピューターより優位に立ったＰＣは、目覚ましいスピードでオフィスに普及しました。大型コンピューターは次第にＰＣサーバーにシェアを奪われていきました。

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