ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第36回 誠品書店創業者 呉清友氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2008年12月5日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第36回 誠品書店創業者 呉清友氏

記事番号:T00012057

 
 誠品書店(eslite Bookstore)は今、台湾の新しいスタイルの書店の代名詞といってもいい。外国人観光客の観光スポットにもなっているほどだ。今回は時代をリードするこの書店を取り上げたい。

 呉清友氏が誠品書店を創業したのは1989年3月、当初は建設や芸術関係の書籍を中心にしていた。eslite(古いフランス語でエリートの意味)の名の通り、扱う商品やそのブランドは高い価値があり、人々に知的な場所であることをアピールしていた。

 しかし、輸入書籍や外国語雑誌に偏った商品ラインナップは知的過ぎて受け入れられず、赤字経営が続いた。

 だが、呉氏は信念を曲げず、一店舗ずつ地道に展開していく。やがて蔵書が充実するに従って一定の市場規模を獲得するに至り、1999年にはついに黒字転換した。その成功を導いた経営戦略をまとめてみよう。

1.独自の地位を確立

 市場での位置付けは「文化、芸術、創造、生活の情報空間」で、書籍、ギャラリー、アート、インテリア、ギフト、リビング用品を扱う。ターゲットは、社会に関心の強いエリートで、毎年約500回の講演や展示プログラムなど、豊富な芸術イベントの開催で集客力を高めている。顧客が触れられる空間は書籍だけでなく、音楽や講演、展示会にまで広がりを持つ。

2.洗練された空間─書籍を選ぶ最高の環境

 洗練された空間をデザインし、従来の単純な書籍販売という形態を変えた。明るく心地よいばかりか、デザイン感覚にあふれている。呉氏は、誠品は単なる書籍売買の場だけでなく、醸し出す雰囲気が「ひとりひとりが安心できる港」を提供しているという。

3.多岐にわたる専門書籍─台湾で初めて

 一般の書籍だけでなく、海外から手広く専門書籍を輸入する。特に音楽や美術、写真、デザインなど専門性の高いものに力を入れ、外国書籍を扱う書店として屈指の存在となり、多くの専門家が訪れるようになった。

4.マーケティング─地域による差別化

 採算を考慮しながらも、各地で土地柄に合わせた店舗を展開する。支店出店の前に、地理的条件と商圏の人口構造を分析、市場調査の上で、空間設計や内装、扱う商品やサービスを企画し、それぞれ書籍の内容を反映したレイアウトなどを行う。店舗自体その土地の文化や顧客層に合う、それぞれ異なるテーマを表している。

 現在、誠品は書店だけでなく複合商業施設を経営し、大型書店と百貨店が融合して、書店もあればショップやカフェ、レストランまであるユニークなスペースとなっている。

 台北市の敦南本店は1999年3月から、営業時間を24時間に延長した。アジアでも初めての試みは、大いに反響を呼び、台北の文化的ランドマークとなった。

 このほか、誠品は高級商業地域である信義計画区に旗艦店をオープンしている(現地はもともと高島屋と統一企業の合弁の百貨店予定地だったが、高島屋本社の海外展開戦略が見直され計画は中断。誠品が後を引き受けた)。ここは地下2階、地上6階で総面積は7,500坪。書店だけでも3,000坪のスペースを占め、台湾でも最大の旗艦書店だ。30万種類、100万冊以上の書籍を扱う。

 新たな試みとして、書店の中に簡体字館、日本語書店、芸術書店などを設けた。読書と趣味、ファッション、娯楽などの要素を空間に取り入れたことで、最先端のファッションなどに触れてセンスを磨くと同時に、ショッピングの楽しみも得られる場所となったのだ。

 誠品は小さな芸術・人文書の専門書店から、台湾全土に50店舗を展開するまでに成長した。創業者・呉清友氏にはずっと持ち続けている信念がある。「書店を開くのではなく、読書の楽しみを伝えたい。さらに、台湾に新たな文化・クリエイティブ産業がいつも生まれ続けるようバックアップする」。


ワイズコンサルティング 荘建中

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。