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第29回 蘋果日報創業者 黎智英氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2008年6月27日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第29回 蘋果日報創業者 黎智英氏

記事番号:T00008427

 
 インターネットの普及で、台湾メディアの間の競争も激しさが増している。「中国時報、リストラで50%の人員削減へ」という記事を6月19日付のワイズニュースで伝えたところだ。
http://www.ys-consulting.com.tw/news/index.php?action=1&tno=8249

 蘋果日報はそんな中でも人気を保ち続けている。同紙は香港で生まれ、03年5月に既に飽和状態にあるとみられていた台湾市場に乗り込んできた。常識を打ち破る革新的な経営手腕で、わずか数年で発行部数50万部を達成、台湾4大紙の仲間入りを果たした。

 創業者の黎智英氏は、「もしアダムとイブがリンゴを食べなければ、この世に善悪は生まれず、新聞も存在しなかった」という理由で、同紙を蘋果日報(アップルデイリー)と名付けた。今回は同社の台湾市場での経営戦略を見ていこう。

1.ヘッドハンティングと低価格戦略

 同社は創刊前の02年末、「同じポストで給与は2倍」という条件を公開し、台湾の2大紙、中国時報と聯合報から60~70人の人材をヘッドハンティングした。また、創刊前の10日間に集中的に1億5,000万台湾元(約5億3,000万円)を投じた広告活動を行った。これにより、同紙は消費者に幅広く知られることに成功した。

 同紙は新製品の価格設定戦略の一つ、ペネトレーションプライシング(低価格戦略)を採用した。1部わずか5元で販売し、あっという間に市場シェアを獲得した(なお、当時の一般紙は15元だったが、蘋果日報発売日に10元に値下げされた)。発行部数が十分伸びてから価格を10元に、05年9月には15元まで値上げしたが、販売部数が減ることはなかった。

2.従来の常識を覆し、読者中心の新聞に

 「トップ記事は政治記事」というこれまでの常識を打ち破り、初めて1面すべてを社会記事で飾った。

 また、写真や図表をふんだんに盛り込み、文字を大きくし、興味をそそるタイトルを付け、簡潔な文章でニュースを報じた。原稿には、日常生活で使う言葉や流行語も取り入れ、記者が書きたい記事ではなく、読者が読みたいニュースに仕上げた。このほか、読者が新聞社にニュースになりそうな情報を伝えることができる24時間ホットラインも設置した。

3.小売り販売が全体の9割

 台湾では一般に、新聞の発行部数の7割以上を宅配による長期契約が占める。一方蘋果日報は、発行部数の9割以上を小売店で販売する。コンビニエンスストアには蘋果日報専用のラックを準備するほどの気の入れようだ。

 黎智英氏によると、長期契約では編集部が怠けてしまう。小売販売なら、新聞の質でその日の販売部数が決まるため、編集部は常に緊張感を保つことができ、同紙が市場で優位に立ち続けることにつながるという。

4.編集の中立性

 蘋果日報は、国民党寄りでも民進党寄りでもなく、広告スポンサーにおもねることもない。編集部は中立の立場にあり、報道のあるべき姿を追求することができる。

 黎智英氏は、同社が取材した内容が真実であれば、取材対象がたとえ影響力の大きい政治家であろうとも構わず紙面に載せると語る。そのため、特定の支持政党を持たない中間層も含めた幅広い支持層の獲得に成功した。

5.スキャンダル記事でのぞき見願望を満たす

 政界や経済界の大物のスキャンダルやプライベートを、独自記事として掲載。つい読みたくなるようなタイトルで、下世話な話題を好む読者を引き付けている。

6.豊富な生活情報を掲載

 紙面数は多く、オールカラーページ。その上、別紙で生活情報も提供している。分野は不動産、ショッピング、電子製品、グルメ、自動車、ゲーム、スポーツなど多岐にわたり、まるで雑誌を読んでいるかのようだ。「読者が読みたいものを提供する」、「まずチャレンジ。誤りを見つければ訂正し、進歩につなげる」という独自のスタイルを堅持する同紙は、業界の逆風の中でも有望な存在であり続けるだろう。


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