記事番号:T00028139
A「明けましておめでとう!」
B「おめでとう!春節ボーナス(年終奨金)、たくさんもらったでしょう?」
A「いやいや、不景気で昔ほどはもらえなかったよ」
B「何カ月分だった?」
A「たったの3カ月だよ。そっちの会社は?」
B「うーん。1カ月!(苦笑)」
春節(旧正月)の台湾では、至る所でこんな会話が交わされたことでしょう。勤め先の業界、企業によってボーナスに差があるのは当然で、Bさんは自分のボーナス額を話すたびに忸怩(じくじ)たる思いを味わうのですが、もう慣れっこにもなっています。
個別のほうが効果的
こうした人にとって春節ボーナスは「もらえて当たり前」で、健康診断や社員旅行などの福利厚生と同じく、「従業員を励ます」効果は薄いとの指摘があります。励ましは全員一律ではなく、個人に応じて行うほうが良い効果が得られるようです。
「励まし(Encouragement)」は、企業内では「財務型」と「非財務型」に分けられ、財務型では金銭報酬が最も直接的な形です。ただ、単純に金銭や物を与える手法は、従業員のやる気を一定期間高める程度で、長期的な効果は期待できず、あまり良いとは言えません。この手法で長期的な効果を期待する場合は、より多くの金銭支給が必要となる一方で、見合った得られる効果は低くなる特徴があります(限界効用逓減の法則)。
では、どのような励ましが最も効果を上げるのでしょうか。ある学者は、米国の心理学者、マズローの欲求階層理論を活用して部下が求めていることを見極め、その「スイッチ」を正しく押せば何倍もの効果を得られる、と主張しています。
筆者は以前帰宅した際、家の中の至る所に台湾のビジネス雑誌「商業週刊」が散らばっていたことがあり、てっきり妻が会社のものを持ち出したものと思って小言を言ったことがあります。すると妻は「業績優秀賞として、上司が1年間の定期購読をプレゼントしてくれたのよ」と言うではありませんか。
上司の心配りに敬服
読書好きの妻にこうした贈り物を与えるとは、彼女の上司の心配りに思わず敬服せざるを得ませんでした。「商業週刊」1年分はたった3,950台湾元、仮に現金で口座に振り込まれていたとしたら別に何とも思わないくらいの金額で、「励まし」の効果など無いに等しかったでしょう。実にうまいやり方です。
昨年わが社に入社したある男性社員は、台湾の人気歌手、蔡依林(ジョリン・ツァイ)の大ファンです。彼の場合は、コンサートチケット2枚を渡せば、絶大な効果を発揮するものと思われます。
筆者はかつて台中市にある地場流通企業に10数年勤めていました。その企業では幹部職に就いて満5年たつと、会社のロゴ入り金貨がもらえることになっていました。全管理職者が参加して行われる授賞式には董事長も台北から飛行機でやって来て(台湾高鉄はまだ開通していませんでした)、受賞者に感想を発表させて、気持ちを高める舞台を作っていました。ただ単に本人が人事部に行って金貨を受け取るというのであれば、「励まし」の効果は大幅に薄れてしまっていたことでしょう。
従業員の気持ちを把握する
以前、台北県(現新北市)の小学校の校長が、生徒に図書館の本を多く読ませようと、ある「認定制度」を作ったことがありました。一学期に30冊借りると「名誉学士」と認定されてハンバーガーの引換券がもらえ、45冊借りると「名誉修士」となって温泉の利用券がもらえます。最高は60冊「名誉博士」なのですが、賞品はなんと「校長先生が1日遊んでくれること」でした。難度が高い上、誰もそんな賞は欲しくありませんでした。
小学生の気持ちは企業の従業員の気持ちに通じます。励ましで良い効果を得たいのであれば従業員の気持ちを理解し、リソース活用の手法、タイミングを熟慮することが経営者にとって重要な課題でしょう。
荘建中
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