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現在、台湾で最も有名な女性政治家と言えば蔡英文氏、その人でしょう。台湾の2大政党の一つで最大野党である、民主進歩党(民進党)始まって以来の女性主席であるとともに、2012年1月に行われる総統選初の女性候補者でもあります。
蔡氏は客家の出身で、台湾大学法学部を卒業後、米国のコーネル大学ロースクールで法学修士、その後英国のロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士を取得し、帰台後は政治大学および東呉大学の教授に就任した経歴の持ち主です。
また、99年に李登輝総統(当時)が発表した中台関係の新定義「二国論」(中国と台湾を「特殊な国と国との関係」と位置付け)を起草したのも蔡氏です。
中国国民党(国民党)から民進党に政権交代が行われた00年、蔡氏は中台関係の政策を担当する行政院大陸委員会の主任委員に就任。当時、立法院での冷静で論理的な答弁が注目を集めました。その後04年に民進党から立法委員選挙に出馬し当選、06~07年には行政院副院長を務めました。
08年には代理で就任した人物を除くと、民進党初の女性主席に就任、今年4月には来年1月の総統選挙初の女性公認候補として選出されました。
党再生に手腕発揮
08年3月、民進党は陳水扁政権の腐敗イメージの重荷により総統選で大敗。国民党に政権を明け渡します。民進党は求心力を失い、満身創痍(そうい)の状態にありました。そんな結党以来最大の危機に直面した同党が、最高指導者である主席に選んだのが蔡氏でした。元教授の主席誕生は偶然ではなく必然のことだったのかもしれません。
蔡氏は主席就任後、穏健路線を取り、与党や中国との対立をあおる従来の民進党の色彩払拭(ふっしょく)に努めました。また、党改革を進める一方で、南部に赴き農作業に参加するなど、庶民との距離を縮めることにも力を注ぎました。その結果、党内の団結力や士気が高まり、蔡氏のクリーンなイメージによって従来の「腐敗政党」というレッテルをはがすことにも成功し、選挙戦で相次いで好成績を残すようになりました。
直轄市長選挙で健闘
昨年11月に行われた5大直轄市長選挙では、国民党が台北市、新北市、台中市の3市を制し、勝敗ラインの3ポストを獲得し勝利した一方、民進党は地盤である台南市と高雄市の両市で圧勝した上に得票総数で国民党の約337万票を約40万票上回る約377万票を獲得しました。
蔡氏は同選挙で新北市長選に立候補し、国民党の朱立倫候補に敗れたものの、100万4,900票を獲得しました。国民党と民進党支持者の比率が「55対45」といわれる新北市で、民進党公認候補が100万票以上を獲得したのは初めてでした。これによって政治家としての能力やリーダーシップが、中間層から一定の支持を得たことが示されました。
蔡氏は自身の性格について、感情をうまく表現するのが苦手で、根拠のない批判に反論するのも好きではないと語ります。持ち前の冷静さは父親譲りだそうで、その父親からは「人と争ってはいけない。他人がやらないこと、できないことを進んでやりなさい」と教えられたそうです。。
果たして台湾の総統選史上初の女性立候補者は、3度目の政権交代を成し遂げられるのでしょうか。来年の総統選に向けどのような主張を展開していくのか、関心が高まっています。
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