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第72回 正新橡膠工業総経理 陳栄華氏


コラム 経営 マーケティング その他 作成日:2011年10月7日

台湾流経営策略

第72回 正新橡膠工業総経理 陳栄華氏

記事番号:T00032997

  「正新橡膠工業」という会社をご存知でしょうか?この企業名を知らなくても、「マキシス(MAXXIS)」と言えば耳にしたことがある人は少なくないのではないでしょうか?同社は、世界最大のブランドコンサルティング会社、インターブランドが発表した「2010年台湾ブランドの価値評価ランキング」で7位にランクインし、ブランド価値は3億9,100万米ドルに達するタイヤ製造専門の企業です。1967年、台湾中部の彰化県で創業しました。

米国進出・新ブランドで勝負

 同社が受託生産専業だった92年、陳栄華総経理は、このままの業態ではいつか経営が行き詰まると不安に駆られます。毎年、顧客(代理店)から値切られ、言い値で受託できない場合、すぐに他の安い受託メーカーに受注を奪われることの繰り返しでした。

 陳総経理は長期的な競争力を備えること、また競争相手に真似のできない特色(技術)を持つことが必要だと考えました。そのため、米国アトランタに乗り込み、膨大な資金を投じてマキシスを創業する一大決心をしました。米国で自転車のタイヤを主力製品に、ニッチ市場に的を絞る作戦に出たのです。台湾で中・低価格路線の「正新」と、米国で高級路線の「マキシス」の、2つの異なるブランド経営を始めたのです。

 陳総経理は「国際的なブランドになるためには、まずは米国への同化が必要だった」と当時を振り返ります。元の社名「正新」ではなく米国風の「マキシス」という社名を選んだのは、まさに「米国化(現地への浸透)」が目的でした。「マキシスという社名なら誰も台湾ブランドだとは思わないでしょう?もし『正新』をローマ字にしただけでは、米国ブランドではないことが一目瞭然ですからね」と、「米国ブランド」を強く意識していたことをうかがわせました。

スポンサーで知名度向上

 ミシュランやグッドイヤーなど有名メーカーが幅をきかせていたタイヤ市場で無名だったマキシスは、スポーツイベントや選手、チームのスポンサーとなる手法で知名度を高めていきました。

 当初は同社のタイヤと直接関係のある自転車、バイク、ジープ、小型車などのレースが対象でした。選手のスポンサーになり、鮮やかなブランドロゴの広告で社名を知ってもらいます。次に優秀な選手とスポンサー契約を結び、無償で練習やテストの環境およびレース用のタイヤを提供します。選手がマキシスのタイヤでレースに出場し勝利を収めれば多少の賞金を獲得することも可能です。選手たちに競技で実際に製品を使ってもらうことで、選手たちから一般の人々へ次第に品質の良さが伝わっていきました。

 会社の知名度が上がるにつれ、国際的なレースにも積極的に参画し、そこでまた知名度を高めていきました。1年に150回ものイベントでスポンサーになり、毎回宣伝効果を挙げました。協賛にかかる費用は同社グループの売上高の2%程度で、これくらいの投資は後で売り上げとしてはね返ってくるので痛くもかゆくもありません。

 開拓を目指す市場では重点的にプロモーションを行いました。中国市場に参入を考えていた時期は、米プロバスケットボールチームのヒューストン・ロケッツのスポンサーになりました。同チーム所属の中国人スター選手、姚明が出場する試合の中継を見る中国の消費者に、社名を売り込むためでした。大リーグ、ヤンキースに日本の松井秀喜選手が入団した際も、同チームへの協賛を行って日本市場への進出を果たしたのです。

 マキシスは、今日では欧米や日本など世界130もの国や地域に展開する国際ブランドとなりました。世界中の子どもからお年寄りまで、誰でも知っているブランドに成長したのです。これを導いたのは、陳総経理の自社製品に対する自信とプライド、そして地道で粘り強いスポンサー戦略だったと言えるでしょう。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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