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第65回 全聯福利中心董事長 林敏雄氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2011年3月4日

台湾流経営策略

第65回 全聯福利中心董事長 林敏雄氏

記事番号:T00028555

 スーパーマーケット、全聯福利中心はかつて、主に軍人や公務員、教職員に対して商品を販売する中華民国消費合作社全国聯合社(軍公教福利社)でした。当時は半官半民といった感じで、従業員に業績達成のプレッシャーもなければサービス精神もなかったため赤字の連続で、台湾全土に68店しかありませんでした。

 1998年、林敏雄氏が経営を引き継ぎ、全聯実業に社名を改めて真の「民営化」を目指してかじを切り直しました。とはいえ当時、この全聯実業が改革に成功し、業界で生き残ることができると考えていた人は少数でした。

 ですが、変革を進めた林氏の努力が徐々に実を結び、全聯は今や台湾全土に570店以上の店舗を構えています。2010年の売上高は570億台湾元に上り、家楽福(カルフール)、統一超商(プレジデント・チェーンストア)と並ぶ、小売大手3社の一つとなりました。今回はそんな全聯の事業モデルとその特徴を分析してきます。

低価格を実現、独自の取引方法

1)手数料不要の「委託販売方式」
売り場に商品を納入する業者は通常、手数料を支払わなければなりません。全聯はこれを受け取らない分、商品を安くするよう業者に求めています。

2)売れてから代金を払う「後払い方式」
一般のスーパーマーケットや量販店が商品販売前に業者に手付金を支払うのに対し、全聯は商品が売れてから業者にその代金を支払います。そのため、全聯は運転資金が潤沢です。

3)業者も買い物客もすべて「現金取引」

 業者と毎月現金で決済するため、全聯の在庫負担が軽減され、損失を抑えることができます。買い物客に対しても現金払いのみを受け付けているため、全聯はクレジットカード利用手数料を銀行に支払う必要がありません。この浮いたコストを、買い物客に低価格設定で還元することができます。

 さまざまな取引手法の積み重ねで、全聯は販売価格が一般の量販店と比べて5〜10%安くなっています。地域密着型の出店戦略

「他社が参入しない場所こそターゲット」

 大型量販店は消費者が密集するエリアに出店するのに対し、全聯は地方をターゲットとしています。

 出店場所が確保しやすい上、賃料も安く、その土地の発展や就業機会創出に貢献できるため、出店を歓迎されます。澎湖島、花蓮、台東などが一例です。

 同時にその土地の生活習慣やニーズに合わせて商品構成を考えています。北部ではオリーブ油が好まれ、中部ではピーナツ油、南部ひまわり油といった具合に、商品を選んで並べる工夫がされています。

弱みを強みに変える広告戦略

 広告では弱点をさらけ出すことで、消費者に安くできる仕組みを理解してもらい、低価格の優位性を伝えています。 06年の広告では「看板も駐車場もない。通路は広くないし、床も高級でない。すてきな制服を着た店員もいない。クレジットカードも使えないし、宅配サービスもない」と欠点を並べ立てることで、こうした費用を節約して低価格化を実現していることを消費者に知ってもらい、本当に安いというイメージを植え付けました。
(http://www.youtube.com/watch?v=-upXzcM867k)

 2007年には「福利カード」会員制度を導入しました。会員になれば買い物のたびにポイントが貯まり、支払い時に割引を受けられます。これにより、買い物客との距離を縮め、来店を促し、顧客ロイヤリティを高めることができます。

 林董事長によると、会員は今や500万人を突破し、昨年だけでも14億ポイントを付与しました。割引額に換算すれば、1億4,000万元相当に上ります。

 全聯の成功は、林董事長の粘り強さと先を見通す力があってこそ。林董事長はこれまで、セブン−イレブンの「損しても出店し続け、経済の規模を追求する販売業の鉄則」を守り続けたといいます。

 全聯は2011年に650店、3年以内に800店まで店舗網を拡大させ、それぞれの地域になくてはならない存在になることを目標としています。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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