記事番号:T00045229
今回は台塩実業の民営化後の初代董事長、鄭宝清氏を紹介します。台塩実業は1952年の設立以来、公営企業として台湾で唯一、各種塩製品の製造に携わってきました。95年の民営化に伴い株式会社になってからは、従来の製塩業者からバイオテクノロジー業者への転換を図り、サプリメントや美容製品などの新製品の研究、開発、製造、販売に取り組んでいます。
鄭氏は立法委員など政界を経た後、02年3月から05年8月まで同社の董事長を務めました。在任中、鄭氏は斬新なアイデアを打ち出し、同社の方針決定や事業の発展に貢献しました。
得意分野に資源を投入
鄭氏は、企業の経営リソースは資金、労働力、時間でいずれも限りがあり、無計画な多角化を行ってもかえってマイナスになると考えており、こうしたリソースは自社の最も得意な、付加価値の高い分野に投入することが発展につながると考えています。
同社は製塩という従来の事業に基づき、海水化学事業(製塩、海水淡化、藻類食品製造、観光レジャーなど)、生物科技事業(バイオテクノロジー。コラーゲンを配合した美容製品市場など)を展開しています。現在、「緑迷雅(Lu-miei)」シリーズの美容製品が人気商品となっています。
ダイヤモンド理論の運用と実践
鄭氏は企業を経営する上で重要なこととして「ダイヤモンド理論」を提唱しました。これはダイヤモンドにある4個の角を「競争の優位を支える4つの重要な条件」に見立てたもので、最低の価格、最高の品質、素早いサービス、最大の特色(他社との差別化)を指します。
またイノベーション、つまり革新という台座に乗せたダイヤモンドに、スピードと戦略を加えることで輝きがもたらされると指摘しています。
鄭氏はさらに「猛、難、辣、魅」の4つの重要な要素を挙げています。「猛」は賞罰を重んじる、「難」は企業が抱える問題(困難)を解決するために従業員の創意工夫を促す、「辣」は従業員から型にとらわれない新たな発想や意見を取り入れる、「魅」は従業員にロイヤルティーを持たせ、自社の発展に貢献する気持ちを養わせることを指します。
これらはいずれも、企業のグローバル化、成長を目指す上で欠かせないものです。
このほか鄭氏は1,000万台湾元を投じて基金を設置し、新製品開発など自社の発展に貢献した従業員には賞与を与えるようにして、従業員に仕事への熱意を起こさせるよう工夫しました。
きめ細やかなサービスで顧客獲得
同社は顧客へのサービスを特に重視しています。例えば24時間体制の顧客向けサービス電話窓口を設置し、どんな問題も1時間以内に対応する、同じ顧客から催促の電話を受けないようにする、わずか1瓶の美容製品の注文でも専門スタッフが配達するなど、徹底しています。
ある時、あるお客が購入した同社の製品を車に置き忘れたことがあり、連絡を受けた鄭氏はすぐに新品を送り届けました。こうしたきめ細かいサービスが、新たな顧客獲得につながっています。
製品開発についても、鄭氏は斬新なアイデアを生かしました。研究費を従来の売上高の2%から10%に引き上げたほか、「363」の原則を実施しました。これは「3カ月で新製品を開発し、6カ月で製造および販売を行い、3カ月で完売する」というもので、非常に効率を重視しています。
公営企業から民営化への過程を経て、台塩は株式会社として順調に発展しています。現在、グローバル化が進む中、企業にとってはいかなる環境の変化においても関連する産業を理解し、常に「変革」を進めることが経営を続ける上で必要です。
鄭氏はこのことを十分に理解している企業家の一人です。
荘建中
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