コラム 経営 人事労務 台湾事情 作成日:2013年10月11日
台湾流経営策略記事番号:T00046334
今回は先月26日に米CNNテレビが発表した「旅行者にとって最高のチェーン店」ランキングで、2位に選ばれた小籠包レストラン、鼎泰豊の楊紀華董事長を紹介します。
鼎泰豊は創業55年で、もともとは食用油の問屋として台北市信義路で開業しました。1972年から小籠包の販売を開始し、現在では世界で88店舗を展開しています。
今回のランキングはCNNの旅行番組「CNNトラベル」を手掛けるスタッフが審査員を務め、サービス内容、看板の見やすさ、商品の品質などが審査基準となりました。CNNのランキングで首位だったセブン−イレブンの世界5万店以上、3位のマクドナルドの同3万店以上と比べると店舗数は圧倒的に少なくても、評価を得ていることは台湾の誇りと言えます。
顧客ごとに異なるサービス
楊董事長は、商品の複製はできても各顧客に対するサービスで同じものはないと考えています。そこで、鼎泰豊ではホールスタッフの胸元にスタッフができる言語の国旗のバッチを付ける工夫をしています。これを見れば外国人客は隣のテーブルの料理を指差すことなく、母国語で気軽に注文することができます。また、タクシーを呼んだり、お薦めの観光地を伝えるのもスタッフの仕事としています。なお、日本人顧客が多いため簡単な日本語能力は必須となっています。
また、顧客第一主義で顧客より1秒早く要望を察知し、サービスを提供することで感動していただきたいと考えています。
箸の落ちた音に慣れさせる
最も驚かれるのは、客が箸を落とした時の対応です。ホールスタッフは箸が落ちた音を聞くや否や、すぐさま新しい箸を届けます。これは新入スタッフの研修時に、何度も箸の落ちた音を聞かせることで、箸の落ちた音に慣れさせていることのたまものです。
その他、客の水を飲む角度にも注意を払っています。水をつぐ時は空になる前につぎ足す必要があるからです。食事中に油やスープが服に飛んでしまった場合に備え、米国から輸入したおしぼりなどを渡し、染みが残らないような工夫もしています。
また、客1人1人に対するサービスのカスタマイズ化も図っています。例えば、注文を受けた際に「油の量を控えめに」、「塩分は少なめに」、「あまり辛くないように」などの希望があれば厨房に伝えています。
外国人観光客は「日本人は先に酒などの飲み物を提供することを好む」、「韓国人は先にご飯を食べる」「欧米人は鳥の足は苦手」など各国・地域で習慣が異なるため、注文の際には人数や国籍など特別な記号で入力し、厨房に知らせています。
「環境衛生員」と呼ばれるスタッフは客がトイレを利用した後には各便座をアルコール消毒し、次の利用者が安心して利用できるサービスを行っています。
規定化していないサービスには「顧客に注文させ過ぎない。注文の際に高いものを薦めない」というものもあります。楊董事長は「頼み過ぎて食べ切れなかった場合、気分が良くないでしょ?」と述べ、例え注文が増え、単価が上がったとしても、1日の売り上げが伸びるだけで長期的には効果がないと考えています。
休憩室にマッサージ師も
また、楊董事長は、心の中にはいつも「人」がいると語っています。「人」は客と従業員を指しています。鼎泰豊では安定したサービス提供のため給与、福利厚生は同業を大きく上回っています。ホールスタッフは月給3万8,000台湾元から(ボーナスなど含まず)です。昼休みもしっかり取らせるため、各店舗付近に冷房完備、マッサージ師がいる休憩室を設けています。心理カウンセラーが定期的に従業員の声を聞くなど、心身共にリラックスできる環境づくりを心掛けています。
楊董事長は、従業員を引き留めるには従業員の満足度を上げる必要があり、客の満足度も従業員の満足度が反映するとの考えをとっています。
多くの人は鼎泰豊の成功は料理の良さとお思いでしょうが、実は優秀な従業員こそが鍵なのです。
短期的コスト圧縮のため、低賃金で人材を集めようとする企業は少なくありませんが、それでは優秀な人材は集まりません。また、新人は仕事への意識が低く、流動性が高いため、長期的に見ればコストの浪費につながり悪循環です。経営者はそこを良く考えなければならないのではないでしょうか。
荘建中
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722