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旅行会社大手、雄獅旅行社(ライオン・トラベル)は1977年の設立で、現在台湾に60カ所、海外に11カ所の営業拠点を持っています。今回は、年間100万人以上に旅行プランを提供する同社董事長の王文傑氏をご紹介します。
台北MRT忠孝復興駅前の一等地に構える店舗は、ガラス張りで清潔感があり、気軽に入れる雰囲気だ(YSN)
インターネットをフル活用
王氏は従来型の旅行会社でキャリアを積んでいましたが、かねてよりインターネットの活用によって競争力を向上できると考えていました。
そんな中、とある航空会社から台北(桃園空港)~ロサンゼルス間の1便350席の販売を受託。営業担当者に旅行代理店を1社ずつ回らせ、店頭での宣伝強化を働き掛けました。ただ、前線で販促に努める営業担当者は、どれだけ座席数が残っているかが分からず、ツアー旅行などをどんどん売り込んでいいものかどうかが判断できませんでした。
現場で生じるこの問題を解決すべく、王氏は95年に旅行業界の情報化につながる大きな一歩を踏み出しました。インターネット上での団体旅行の予約システムの構築です。これにより営業担当者はパソコンから予約状況がいつでも把握できるようになりました。同業他社がまだ電話で客と連絡を取り合っていた90年代、王氏は計2億台湾元をインターネットシステムの設備投資に充てたのです。
01年には提携パートナー向けサイトも開設し、旅行代理店などが割り振られたアカウントとパスワードによって、予約状況、価格、人数ともに一目瞭然となりました。
02年には消費者向けに世界共通の予約サイトを設立。それまでは旅行代理店という販売チャネルを通じてのみ販売していた旅行商品を、消費者が直接アクセスして購入できるようにしたのです。これにより消費者への直販率が00年以前の5%から一気に60~70%に上昇。ネットチャネルの活用が団体旅行の販売効率と販売量の拡大につながったのです。
王氏は「リアル」の店舗も一変させました。旅行会社にありがちだったビル内の「オフィスの一部」のような店づくりから、台北市東区商圏などに明るい雰囲気の店舗を出していきました。24時間体制で、出店当初は驚かれたものです。スタッフのユニフォームもフライトアテンダントをモデルとしたものとし、イメージアップを図りました。
社内は「LINE」で管理
王氏の経営スタイルにはきめ細かさがあります。例えば、第1線の同社幹部と午前8時前と午後6時以降にそれぞれ会議を開き、各プロジェクトの進捗(しんちょく)を自らチェックします。社内にはこのため「早8晩6」(朝8時晩6時)という言葉が生まれ、自身を「8時党」(前日にどれだけ遅くまで残業しても翌朝は8時前に出社しないといけない立場)と呼ぶ幹部もいます。
ここ数年、王氏は無料通話・メールのスマートフォンアプリ「LINE(ライン)」を利用して社内を管理しています。全世界2,600人の社員をLINEの連絡先に登録し、社内情報をタイムリーに把握しています。このLINEのシステム運用・保守だけに毎日30人の社員が動員されています。各プロジェクトごとに立ち上げたコミュニティー数はグループ全体で900以上で、プロジェクトに関わる社員が自由に参加・議論ができるようにしてあります。
ただ、王氏は社員のやり取りを1つずつは読まず、進捗状況の把握は各プロジェクトリーダーに任せています。中には「休暇中に最新状況を報告するよう董事長に言われた」とLINEでこぼす社員もいたようですが。
盤石なシステムで競争に勝つ
王氏は、24時間体制のシステム運用により経営効率を高められ、1分1秒が勝敗を分ける市場競争の中で勝ち抜き、特にグローバル事業でぶつかる時差の問題を解消できたと語ります。
その一例として、数カ月前のとある金曜日の夕方、航空会社から突然、出発日が1週間以内に迫る便の空席消化を依頼されましたが、同社は海外子会社の20人以上の幹部を動員し、他社に先駆けて販売を完了しました。優れた社内システムを使い、依頼された航空チケットとセット販売するリソース(ホテル、交通手段、レストラン、現地観光ガイドの数など)が十分かどうかを迅速に確認できたためです。
このように情報技術に裏打ちされた経営システムが強みとなり、雄獅旅行社はブランドとしての存在感を増していきました。経営規模は迅速に拡大し、価格交渉力も他社の追随を許さなくなりました。業界一の低コストで海外ホテルの宿泊プランを提供できるようになり、同業との価格競争に陥っていた過去とは決別。航空会社は売り余っている空席を進んで同社に依頼するようになりました。かつては弱かった立場が、航空会社との価格交渉で対等に張り合えるようになったのです。
リアルとネットの販売チャネルをうまく統合し、同社は単に旅行商品を販売するだけの会社から、広告販売や旅行コンサルティングも手掛ける企業へと進化しました。また、消費者にとっては「旅行を計画したらまず最初に利用する予約サイト」の運営会社になりました。インターネットに対する王氏の先見の明と、その緻密な経営手腕が生んだ成果と言えるでしょう。
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