ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00049008

　婦人服販売の東京著衣は2004年に５万台湾元の元手で開業し、10年で売上高20億元、中台でネットショップ各６店、台湾で実店舗３店を展開する巨大企業となりました。今回は５坪の学生寮から創業した同社の周品均執行長をご紹介いたします。

ネットオークションで人気に

　周氏は学生時代に洋服の購入代金を稼ぐため、自身の古着をインターネットオークションで販売していましたが、センスの良さが口コミで人気を呼び、家族から５万元を借りて東京著衣を創業しました。

　彼女は自身のセンスを頼りに数多くの婦人服問屋が軒を連ねる台北・五分埔で、人気の出そうな服を仕入れる一方、購入者に対しては１着を何通りにも着こなすアレンジを紹介したり、「代金の振り込みを確認した」「出荷した」などの情報を即座に連絡するようにしました。そうして睡眠時間以外の全てを顧客とのコミュニケーションに費やした結果、１年後にはヤフーオークションで累積評価１位を獲得する人気店となりました。ただ、翌年にはあまりの人気で問屋からの供給が間に合わなくなったため、周氏は製造元の中国広東省東莞にある工場と直接取引を開始するようになり、創業４年で300坪の本部を構えるまでになりました。

月間約500点を投入

　東京著衣の特徴的な点は、まず毎週平均150着、月間約500着のペースで新製品を発売していることでしょう。膨大な新製品の投入を可能にしているのは、服飾デザイナーの知識を持つ３組の商品開発グループで、▽台湾内外からの仕入れ▽自社デザイン▽最新の流行を探るリサーチ──に分かれています。同社は15〜45歳と幅広い年齢層が対象ですが、自社で型紙を起こすことで、多様なニーズに対応しています。

　次にデザインから出荷までの時間が短いことが挙げられます。東京著衣の場合、デザインから生産までが14〜20日、注文後の発送も半数が入金翌日、遅くても７日以内に顧客の手元に届くようになっています。価格も安く、百貨店で販売されている台湾ブランドの1,000〜2,000元相当のシフォンシャツが東京著衣では300元です。

親身なアドバイスも健在

　また製造プロセスだけでなく、カスタマーサービスもネットオークション時代からのやり方を維持しています。フリーダイヤルを設け、「下半身が太めだけど、どんな服が似合うか？」「結婚式に行くのだけど、スーツは着たくない、何を着たらいいか？」といった質問に年齢、肌の色、体型などを考慮しながら親身になってコーディネートの提案を行っています。

　周氏はコーディネートサービスについて、「お客様と友達や姉妹になったつもりで服を選ぶように」と指導しており、顧客とそのような関係を築くことがブランド好感度の向上やリピーター獲得による業績アップにつながると語ります。

　同社は電話によるコーディネートサービスの他、同一顧客が別の時間に購入した注文との一本化や送料無料の導入、クレジットカード決済時の手数料無料化、コンビニエンスストアでの受け取りなど、ネットオークション業界では他社が行っていない革新的なサービスを率先して導入しています。

小さな工夫で顧客を離さない

　この他、彼女は発送する荷物にイヤリングやヘアピンなどの小物を同梱したり、商品開発に使ったサンプルや発注ミスの製品などを入れたお得感のある福袋を用意するなど、顧客のハートをつかんで離さない工夫を随所に行っています。

　周氏にとって成功とは他人の後追いではなく、自ら切り開くものだったのでしょう。

　ただ、悲しいことに彼女は一緒に事業を起こした夫・鄭景太氏と昨年離婚しており、「夫婦は苦しみを分かち合えても、富は分かち合えない」という中国のことわざの通りになってしまいました。