記事番号:T00050756
大億集団は自動車用ヘッドライトの台湾最大手で、他にも光電、バイオ、ホテル、ゴルフ場など、さまざまな事業を手掛けています。グループの吳俊億董事長は台南市七股出身で、生家は製塩業を営んでいました。40数年前、無尽講で借りた3万台湾元を元手に事業を起こした創業オーナーで、今やグループ全体の年間売上高は300億元に達しています。
許文龍氏を説得
呉董事長がバイク部品販売の大億実業を立ち上げたのはまだ20代の時でした。当時、部品の販売や代金の回収にバイクを利用し、運転中にさまざまなビジネスのアイデアを考えました。冬は風が冷たい中を運転してよく体が冷えたため、バイクに防風ガラスを取り付けることを考え付きました。当時の台湾ではまだそうした商品を生産する企業がなかったため、アクリル板最大手だった奇美実業の許文龍董事長を訪ね、両社共同でバイク用防風ガラスを開発する約束を取り付けました。許董事長はビジネスに意欲を燃やす若い呉董事長を好ましく思い、呉董事長に貸した資金は、商品の販売後まで返済を待ってくれました。
当時よく利用していた省道(日本の国道に相当)はアスファルトで舗装していたものの、道路の両脇には砂利が散らばっており、呉董事長は高速で追い越してくるブタ積載車やバナナ運搬車を避ける際、砂利道に出て転倒してヘッドライトを壊していました。この経験から、ヘッドライトは消耗品のため作れば売れると考え、生産工場を設けることを決めたのです。
裕隆との取引に成功
呉董事長はヘッドライト事業に進出後、多大な努力を経て裕隆汽車製造(ユーロン・モーター)との取引獲得に成功します。当時裕隆はヘッドライトに輸入品を使っており、調達担当経理を十数回訪れて大億の製品を売り込みましたが、台湾地場企業の品質を信用してくれませんでした。そこで、裕隆に製品を試しに使ってもらうことにしました。「裕隆が気に入らなければ開発費の1千数百万元を全て大億が負担する」という賭け同然の勝負に踏み切ったのです。裕隆に納得してもらえる製品を生産するために、呉董事長は世界中を商談で回りました。最終的に日本の小糸製作所から技術協力を得られたことで、裕隆は大億のヘッドライトの採用を決め、大億はその後トヨタ、日産からも受注を得ました。こうした成功により、現在ヘッドライト部門では世界100数十カ国に営業拠点を持つに至りました。
呉董事長はビジネスを展開する上で、戦略、技術、管理の3本柱が最も重要と考えています。戦略が正しく、技術を持ち、管理がしっかりしていれば失敗はしないという考えで、同グループの場合は、戦略は政府の政策に沿い、技術は日本の大手企業と提携、管理面では特に危機管理に重点を置いています。
「縁と福を大切に」
呉董事長は仏教の信仰に篤く、大億交通工業の工場棟には、「縁を大切にし、福を大切にし、恩に感謝し、恥を知る」という標語が書かれています。一般の製造工場で掲げられる「効率」や「品質」などと比べるといかにも異色ですが、これらの標語こそ大億グループを発展させる原動力と考えています。多くの人が集まって一緒に仕事をすることは「縁」であり、給料を稼いで家族を養えることは「福」です。また、後工程の担当者は前工程の人の仕事に、前工程の担当者は製品を仕上げる後工程に感謝すべきで、自身の仕事が他人の仕事に影響する以上、ミスを犯した際は恥を知るべきと、これらの概念の重要さを語っています。
呉董事長の「人に一歩譲り、無理に頭角を示さず、真面目に仕事をすれば得られるべきものは自然に得られる」という「2番手哲学」と、「敵を友とし、礼儀で接する」という「おじぎ哲学」は、ビジネスに無形の恩恵をもたらしました。「注意深く行いさえすれば成功しない訳がない。ビジネスもそうだし、人生もそうだ」と呉董事長は常々語っています。
荘建中
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