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第91回 第一資源回収物運銷合作社 理事主席 魏進益氏


コラム 人事労務 台湾事情 作成日:2013年6月7日

台湾流経営策略

第91回 第一資源回収物運銷合作社 理事主席 魏進益氏

記事番号:T00044089

 廃品回収で年商60億元

 今回は、汚れ仕事として敬遠されがちな古新聞や廃品回収業で身を起こし、年商60億台湾元の大企業「第一資源回収物運銷合作社」のオーナーに出世した魏進益氏を紹介します。同社は桃園市にある台湾最大手の廃品回収業で、傘下に計15カ所の運送販売拠点を持ち、廃品などの収集、出荷を行っています。古紙の回収量は年間45万トン、扱う品もくず鉄や廃棄物にまで広がりました。社員数は、創業当初は数百人でしたが、現在では2,800人を超えています。

 幼いころに父を亡くした魏氏自身、中学卒業後、16歳でごみ回収業に携わりましたが、同社の社員も中卒者が多いです。ただ、皆業務能力に優れ、高いロイヤルティーを持っています。これは、魏氏が従業員の気持ちを理解し、十分な働きをした場合にはそれに見合っただけの報奨金を与えているためです。

 同社では班ごとに、廃品や古紙の買取量および価格を自由に決めて取引ができます。そして、班ごとの年間業績に合わせてボーナスが決まります。業績を残せばそれに見合っただけのボーナスが得られるとなれば、誰もが懸命に働くようになり、当然本社の業績も伸びます。なお、本社では各班の取引総額の1,000分の4を徴収しており、その額は年間で1,680万元に上ります。

 時には問題も起こります。同社傘下の15の拠点は、北部の都市部の周辺に集まっており、各班の管轄地域別に価格が異なるため、より高く買い取ってくれる隣の地域で古紙を売ろうという顧客が現れ、2つの班の間でトラブルが発生する場合があります。こんな時、魏氏は双方の言い分を聞き、お互いに納得できるような結論を導き出します。「顧客獲得をめぐって争いが起きるのは日常茶飯事です。でも、みんなの財布が膨らんでいる、これが一番大切なんです」と魏氏は語ります。

 もちろん、誠実に仕事に取り組んでいる班の班長が損をすることはありません。仮に十分な業績が上げられない場合でも、魏氏はきちんと報酬を与えています。

離婚した社員は退社

 魏氏は巧みな人心掌握術で組織を動かす一方、独自の哲学も導入しています。例えば社員が離婚した場合は、その社員は社を去らなければなりません。「女房は昔、お前さんと一緒に苦労を共にしてきた。それが今になってお金ができたからといって女房を追い出すというのは、私に対する裏切り行為に等しい」というのが魏氏の言い分です。薄情な人間を憎む魏氏のこうした考えは、幼いころから苦労を積んできた生い立ちと関係があるのかもしれません。

 魏氏はまた、社員教育の一環として、毎週月曜日の午後6時半から、15人の班長を集めて講義を行っています。その費用だけでも年間100万元余りに上りますが、魏氏は気にしません。また班長の登用には試験を行っています。試験の内容は、税法、会計、インターネット流通の流れ、さらに会社の組織など広範囲に及びます。

 時には「あなたはこんなに稼いでおり、しかも当社にはこれほど多くの社員がいるのに、なぜ当社を離れて自分で起業しようと思わないのか」といった意味深い質問も用意されます。班長はこの問題に回答するために、同社で頑張るのと、自分で起業した場合ではどちらが稼げるか、という問題を真剣に考えなければなりません。つまりこの質問の根底には、企業と社員の関係、企業を発展させるために従業員はどうあるべきかを考えてほしいという魏氏の考えが潜んでいるのです。

 魏氏の「ごみを拾って黄金に変えた」実績は、企業経営の新たな境地を開いています。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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