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中呈実業(ゾンソン)は、世界で年間500万~600万個生産されるゴルフ用キャディーバッグ市場で、シェア約8%を占める受託生産メーカーです。ナイキ、テーラーメイドといった上位7大ブランドから受注しており、タイガー・ウッズや昨年マスターズ・トーナメントで優勝を果たしたジョーダン・スピースなどランキング100位以内の9割の選手が、ゾンソンが生産したキャディーバッグを使用しています。
日本メーカーのサンプルが転機に
蕭崑林氏は1980年、現在の桃園市中壢区で、世界で初めての華人経営のキャディーバッグ専門メーカーとして、ゾンソンを設立しました。当時、キャディーバッグ市場は大きく成長していましたが、ゾンソンは設立後3年間、全く顧客を獲得できず、株主が逃げ出し、蕭氏の負債は1,000万台湾元まで膨らみました。
蕭氏はそのころ、釣り用品メーカーのダイワ精工(現グローブライド)がゴルフ用品市場に参入しようと送ってきた商品サンプルを見て、自社がこのように良いキャディーバッグを作れない理由を理解しました。これまで革かばんを作ったことがある株主に頼ってキャディーバッグを作っていたので、外観のみにとらわれ、生地の品質や設計をおろそかにしており、本物のキャディーバッグと全く違うことに気付いたのです。
蕭氏は一からやり直そうと、合成皮革(ポリウレタン、PU)を使用したり、ねじのさび問題など細部まで見直し、技術開発と品質向上に努めました。その結果、ダイワ精工からの受注に成功。その後も次々と受注できるようになりました。
ナイキの子供用で復活
蕭氏は01年、2度目の危機に直面しました。販売価格の半分を材料費が占めているはずなのに、中国メーカーが台湾製品の半値を実現したからです。そんなとき、蕭氏のもとにナイキからある受注が舞い込みました。
当時ちょうどタイガー・ウッズ人気の絶頂期で、ナイキはタイガー・ウッズが5歳で有名になったストーリーを基に、5~7歳の子供用キャディーバッグを作ろうと考えていました。条件は、販売価格100米ドルの成人用キャディーバッグと同じ品質ながら、予算は20米ドル、しかも1年で8,000個という少量注文です。他に引き受けるメーカーがなく、最後に蕭氏のところに受注が回ってきたのですが、蕭氏にとっても最後のチャンス。何とか資金を絞り出し、ナイキの厳しい要求通りに、中国に新工場を建設したところ、1年間の受注量は22万個に上りました。
ナイキからの受注を獲得し続けるためには、毎年異なる新製品のテーマやコンセプトに合わせて材質などの調整が必要で、受託メーカーにとって大きな試練です。
蕭氏によると、ゾンソンは従来、ゴルフクラブメーカーに設計を任せていたので、自社で設計することは少なかったのですが、今では年間30~40種類のキャディーバッグを設計しており、ゴルファーの打球の癖や性格に至るまでよく観察し、例えばタオルの置き方、水筒の取り方まで細かく記録しています。キャディーバッグのどの位置にポケットを作れば、選手が使いやすいかを考えるためです。
受託生産から自社ブランドへ
近年のゴルフ市場の縮小に伴い、ナイキは今年8月、ゴルフ用具事業からの撤退を決めました。ゾンソンは受注の40%を失うことになりますが、これまでに築いた信頼で、他ブランドとの提携を拡大するほか、市場衰退を意識して数年前に創出した自社ブランド「ベッセル」に注力することで、今回の危機も着実に乗り切る構えです。
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