ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00060770

　婦人服のインターネット通販サイト大手、ＯＢ（オレンジベア）厳選は2004年にオークションサイトのヤフー！奇摩拍売で創業し、11年に公式サイトを設立しました。14年の売上高は25億台湾元に達し、15年は30億元に増えると予想されています。このうち海外の売上構成比は30%で、うち中国が20%、東南アジアが10%。ＯＢ厳選が海外に販路を拡大し、毎年売上成長を続ける背景には、32歳の若き張祐誠営運長の戦略がありました。

明確なブランド位置付け

　ネット通販サイトの宣伝文句は、一般的には「業界最大、最高、最多」といったものですが、張氏は消費者にあいまいなブランド概念を押し付けるよりも、特定の商品でブランドの位置付けをはっきりさせた方が効果が上がる判断しました。そこで、まず女性の消費者心理を研究して、女性のファッション需要を満たすため、「着やせ」をアピールしたデニムパンツを主力商品に据えました。さらに、サイズをＸＳから４Ｌの８種類、色を24種類から選べる「全年齢層・全サイズ」戦略を打ち出して、メーンターゲットの20〜29歳の若年層だけでなく、中年の女性も取り込むようにし、「ＯＢ厳選といえばデニムパンツ」というイメージを植え付けたのです。その後、品ぞろえを婦人服から下着や靴にも広げ、15年第３四半期には紳士服の販売も開始しました。

現物出荷でスピード配達実現

　婦人服市場では、ある商品に人気が出るとすぐに同業が追随して販売するため、「オリジナル商品」がほとんどなく、消費者にアピールできるのは配達スピードだけでした。また、通販業者の多くは在庫を抱えないよう、受注後生産の予約制を取っていました。張氏はこの予約制を取らず、全ての商品を現物出荷するようにしました。さらに当日午前の注文で商品が午後に客へ届くようにし、台湾通販業界における「配達に10日〜１カ月かかる」という既成概念を打ち破ったのです。

　また、ＯＢ厳選は、アパレル通販業者は安さを競うだけでなくブランド力を向上する必要があるとして、11年に公式サイトを設立。デザイン、生産、マーケティングまで一貫してこなす経営モデルを構築しました。デザイナー育成と生産ライン構築に注力し、台湾内外のファッションを研究してトレンド把握にも努めました。また、タレントに依頼して商品をデザインしてもらい、欧米ファッション風の提携シリーズを投入しました。

　12年にはサンリオキャラクターの独占ライセンスを取得。さらに全家便利商店（台湾ファミリーマート）の全土4,000店で提携商品を販売することで、ブランド知名度を上げていきました。13年には中台でディズニーキャラクター商品のライセンスを取得。同年、財団法人の心路基金会、台湾の人気ロックバンド「五月天（メイデイ）」、有名ブロガーと協力してＴシャツ販売の義援活動を推進したことも話題を呼び、ブランド知名度はさらに向上しました。

海外・ＬＩＮＥに販路拡大

　中国ではインターネット通販サイト「天猫商城（TMALL）」や「淘宝網（タオバオ）」の淘宝集市と提携しました。14年にＯＢ厳選は台湾の婦人服ネット通販業者で初めて英語版の公式サイトを設立。またシンガポール、マレーシアなどに向けフェイスブックページを公開し、消費者との接点を増やしました。

　スマートフォンの普及とネット通販市場の成長により、消費者はスマホやタブレット端末などを通じていつでもどこでもショッピングを楽しめるようになりました。張氏はスマホアプリの開発とスマホ版公式サイトの設置によりスマホ向けプラットフォームを統合し、ネットショッピングの利便性を高めました。また張氏は、台湾のユーザー数が1,700万人に上る無料対話アプリ「ＬＩＮＥ（ライン）」の「橘熊（オレンジベア）」スタンプを開発。若者を中心とした潜在顧客との接点を増やしました。

実店舗も展開

　ＯＢ厳選は15年１月、1,000万元を投じて台北市の東区商圏に、同社初の実店舗となるブランド旗艦店（100坪）をオープンしました。初日の来店者数は6,000人を記録。通販サイトと融合したオムニチャネル販売戦略は奏効したといえるでしょう。