記事番号:T00000078
● 競合の無いビジネスは時間が掛かる
経営者や経営幹部にインタビューする際に度々「競合が多くて儲からない」というお話しを聞きます。
確かに競合が多いと価格競争になりがちで利益が出にくくなります。
そこで起業を考える方は「競合の全くいない斬新なビジネス」を考えがちですが、実は全く新しいビジネスは起業にはあまり向かないのです。
● 事例
1999年当時の台北では純韓国式の焼き肉ではなく、日本的な焼き肉屋が「日式焼き肉」として大流行していた。
日本人のAさん(学生)とBさん(社会人)は面識が無かったが、それぞれの夢を持って日式焼き肉屋で起業する事を決めた。
● 競合の多いビジネスを選択したAさんの場合
日本で焼き肉屋でのバイト経験が有り、学生の身分だったAさんは、学生の目線から見ると台湾にある日式焼き肉屋には満足していなかった。
理由は、
1. 学生がちょくちょく食べられる値段ではない。
2. 日本にはもっと美味しい店が沢山ある。
そこで、Aさんは親からお金を借りて、焼き肉屋をはじめる事にした。
少ない資本で、しかも学業の傍ら経営をしていたので、開店当初は苦労した。
その努力の結果、学生が頻繁に利用できて楽しんでもらえる焼き肉屋を試行錯誤の末に創り上げたのだった。
現在はAさんは五店を超えるチェーン店の経営者となり、若いながらもベンツに乗っている。
● 競合のいないビジネスを選択したBさんの場合
調理師免許を持ち社会経験の有るBさんは、競争が激しい台北を敢て避け、地方都市で日式焼き肉を開業した。
Bさんの考えは、以下の通りであった。
1. 台北は競合が激しいので、後発の参入では苦労する。
2. 日本で流行っていて、台北で流行っているのなら、台湾の地方都市でも必ず流行る。
しかし、台湾の人はもともと牛肉を食す習慣があまり無かったので、Bさんは市場を創り上げる事に多くの時間と費用をつぎ込む事になっていた。
最近長年の努力の結果、やっと固定客がつきはじめて、収入が安定してきた…
● 解説
Bさんの様な斬新なビジネスは確かに競合もいないのですが、市場(顧客)もほとんどありません。
そこで競争戦略より市場(顧客)を育成する戦略が必要になります。
顧客を啓蒙するには多くの費用或は時間を必要としがちで、それらに時間を取られている間に資本金を食いつぶしかねません。
それに対し競合の多い市場では、顧客側も利用経験が多いわけですから、企業努力が他社との差別化として認められます。
顧客にとって付加価値を上げる特徴を見つけ出す改良を行う事で突破口を見つけ出す事が可能です。
参入するのに理想的な市場は以下の二つの市場と考えられます。
1. 成長期に入っている市場
2. 成熟期の市場だが他社との差別化が容易に可能な市場
ワイズコンサルティング 吉本康志