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改札を出れば、そこはパンの世界──。今年8月に台湾高速鉄路(高鉄)台中駅に、人気ベーカリー「呉宝春麦方店」がオープンしました。世界一のパン職人を決定する「マスター・ド・ラ・ブーランジュリー」で2010年に優勝した呉宝春氏による呉宝春麦方店は、他に3店舗(台北、台中、高雄)あり、どの店も店内は人波が絶えません。
台中高鉄店。閉店1時間以上前に早くも売り切れでした(YSN)
店名の麦方は台湾語で「パン」と読みます。ポルトガル語から日本語を経由して台湾語になりました。
20歳で文字を学ぶ
呉氏は1970年生まれ、自然豊かな屏東県で育ちました。12歳と幼くして父を亡くした呉氏は、貧しい家の末っ子。勉強嫌いで、字も読めず、パン職人の道を歩むことを決意しました。
弟子入りし、毎日15時間の修行を4年半続け、ようやくパン職人となった呉氏ですが、教えてもらった通りにやっているだけでは、深い味わい、風味、食感、目新しさを求める消費者の好みの変化についていけず、販売は落ち込むばかり。このままではだめだと感じ、20歳で就いた兵役の機会を利用して、字を学ぶことを決心します。同期に助けられながら、テレビの字幕を目と耳で追い、必死で勉強しました。
その後、独学2年でパン屋開業にこぎ着けた陳撫光氏に弟子入りし、パン作りの秘訣(ひけつ)を学ぶ日々が始まりました。陳氏は呉氏の味覚を養うため、▽ホテル▽フレンチレストラン▽会員制ラウンジ──など、呉氏をさまざまな場所に連れていきました。見知らぬ世界、味わったことのない料理、「こんなものも食材にできるのか!」という発見…。陳氏のおかげで、呉氏は食やライフスタイルへの理解を深めました。
陳氏はこの他、クラシック音楽やジャズを聴かせたり、酒の嗜(たしな)みを教えたりと、呉氏の教養も養いました。
日本のパンが手本
あるとき、陳氏は呉氏を紀伊國屋書店に連れていき、日本のベーカリー専門書を買い与えました。本の内容を理解するため、勉強が嫌いだった呉氏が日本語の勉強を始めました。
30歳で初めての海外の行き先は日本。パン作りの盛んな日本で、本場のフランスパンを味わうためでした。台湾に戻った呉氏は、同じ味のフランスパンを作ろうと調合の研究を重ねます。3年かかり、ようやく満足できるフランスパンを完成させました。
呉氏は06年、ベーカリーのワールドカップ「クープ・デュ・モンド・ド・ラ・ブーランジュリー」で台湾1位の栄光を手にしました。07年にはアジア地区1位に、08年には「酒醸桂円麺包(赤ワインとリュウガンパン)」で世界2位に、そして10年に開催された第1回「マスター・ド・ラ・ブーランジュリー」では「荔枝玫瑰麺包(バラとライチパン)」で世界1位に輝きました。
グランプリに輝いた荔枝玫瑰麺包(YSN)
呉氏は10年、高雄に最初の店舗をオープン。ヨーロピアンスタイルで、内装にレンガなどを用い、オープンキッチンで、心地よく安心してパンを楽しめる空間に仕上げました。
台北では続いて13年、流行の発信地、松山文創園区(松山カルチャー&クリエーティブパーク)の誠品生活松菸店に出店しました。17年には台中国家歌劇院(台中ナショナル・シアター)近くで台中店をオープン。まるで劇場のように、パン作りの過程を見て楽しめる開放的な設計です。
台北店は今年8月、台北MRT(都市交通システム)象山駅そばに移転し、リニューアルオープンしました。この店舗では、従来のように店員がパンを売り、職人がパンを作るのでなく、パン職人のシェフが店長を担います。対立していた販売員とパン職人が協力して店舗を運営することで、消費者が満足するパン作りを目指しています。
母への感謝をロゴに
呉宝春麦方店のロゴは、国際的に有名なデザイナー蕭青陽氏による設計です。遠くから見るとパイナップルに、近くからだと星々、月、太陽に見えます。
星々は呉氏のベーカリー界での輝かしい業績、月は母のぬくもり、太陽はパイナップルを意味し、収穫による女手一つで8人兄弟を育ててくれたことへの感謝が込められています。
台湾に伝わった「パン」、今では呉氏の世界レベルの技術と台湾の食材によって、世界中に再発信されています。
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