第150回 「街口支付」執行長 胡亦嘉氏


コラム 台湾事情 2019年1月18日

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第150回 「街口支付」執行長 胡亦嘉氏

記事番号:T00081585

   2015年にサービスを開始したモバイル決済の「街口支付(JKOPAY)」は、月間決済件数が320万件以上と創業当初の1万9,000件の168倍に増加し、台湾で最も使用頻度の高いモバイル決済サービスに成長しました。資訊工業策進会(資策会)産業情報研究所(MIC)が今月発表した最も利用するモバイル決済サービスの調査では、街口支付は19.7%と、LINEペイ(22.3%)、アップルペイ(19.9%)に次ぐ3位につけました。

/date/2019/01/18/20column_2.jpgアプリの説明をする胡亦嘉氏。モバイル決済サービスが乱立する中、次はどんな手腕を見せてくれるのでしょうか(同社フェイスブックより)

 創業者で執行長の胡亦嘉氏は1980年生まれ。祖父の胡炘氏は60年代に蒋介石総統の侍衛長を務め、父親の胡定吾(ベニー・フー)氏は中華開発工業銀行(CDIB、現在の中華開発資本)董事長、台北101ビルを運営する台北金融大楼の董事長を歴任するなど、裕福な家庭で育ちました。金融業界との関わりに恵まれ、父親の政界・財界の人脈の助けもあり、新参者ながら業界のキーパーソンとしての地位を早くも手に入れました。

街角から生活を変える

 「大きな街路から小さな通りまであらゆるところに浸透し、台湾人の生活を変えていきたい。だから『街口』と名付けた」と胡亦嘉氏は語ります。創業直後は「小さな通りから都市を囲い込む」という戦略の下、饒河街観光夜市や台湾師範大学(師大)夜市、寧夏路夜市などの夜市(ナイトマーケット)の屋台への展開からスタート、その後飲料スタンドなどの商店にも拡大していきました。

 胡亦嘉氏は、夜市では1回当たりの消費金額が大きくないことに目を付け、街口支付での決済に小額還元する仕組みを取り入れ、利用者を獲得していきました。60台湾元(約210円)の飲料に半額の30元の還元を実施したこともありました。大盤振る舞いが過ぎるように思われるかもしれませんが、胡亦嘉氏は、新たな利用者を獲得できれば、広告費を支払うよりもはるかに得だと考えたのです。

現金決済の悩みを解決

 街口支付の導入は、利用者だけでなく屋台の業者にとってもメリットがあります。お釣りの受け渡しが不要で、偽札をつかまされるリスクがなく、お金を触らなくてよいので衛生的です。街口支付は今では台湾全土の6万5,000店で使用可能となり、コンビニエンスストアやドラッグストア、スーパーマーケットなどの大手も導入するまでに成長しました。タクシーの配車、デリバリーの注文、台北市では駐車料金と水道料金の納付のサービスも提供しています。

 街口支付は当初、クレジットカードのひも付けが必要で、20~45歳のカード利用者に主をターゲットに定めていました。この層はコンビニ、グルメ、タクシーなどの利用が多いため、月曜から金曜まで、店のジャンルごとにお得感を実感できる高い還元率のキャンペーンを行う「会員日」を設け、利用者のつなぎ止めに努めました。

 過去の例ですが、▽月曜は「コンビニの日」▽火曜は頂好超市(ウエルカム)、美廉社(シンプルマート)などの「スーパーの日」▽水曜は台湾大車隊(台湾タクシー)乗車で還元する「タクシーの日」▽木曜は「デリバリーの日」▽金曜は「グルメの日」──といった具合です。還元は「街口幣」と呼ばれるポイントで行われ、次回利用時の消費金額に充当できます。使用方法も簡単で、支払いバーコードを提示するだけでよく、新たな登録作業も必要ありません。

 街口支付は、手数料収入を主な収益としています。商店の他、銀行とも交渉しサービス手数料を徴収していますが、創業初期は多くの還元キャンペーンを実施したため、損益均衡は容易ではありませんでした。ただ、この時の高い還元率が、商店と利用者双方を街口支付のサービスに引き付け、会員の定着度のアップと将来への足場を築いたのです。

銀行口座対応で新サービス

 18年2月、街口支付は台湾で6社目となる電子決済サービスの事業者免許を取得、銀行口座とのひも付けが可能になりました。クレジットカードの発行審査対象外の20歳未満の若年層でも利用可能となって顧客層が拡大した他、電子マネーでの還元、手数料無しでの振り込み、支払いなどの新しいサービスの提供が可能になりました。同年はオンラインショッピングとの連携も強化、momo購物網など22の電子商取引(EC)サイトでの決済で利用可能になりました。

 街口支付は、設立から現在まで、約3億元をポイント還元に投入したとみられています。ただ、台湾は現金決済の市場規模が7兆元、クレジットカード決済が3兆元で、この獲得を目指す上では必ずしも大きな支出ではないでしょう。良いものを作り出し、市場シェア獲得に先手を打つという胡亦嘉氏の理念の下、台湾の全ての決済がモバイル化される日もそう遠くないかもしれません。

 

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シニアコンサルタント

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