ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第155回 騰輝電子董事長 労開陸氏


コラム 台湾事情 作成日:2019年6月21日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第155回 騰輝電子董事長 労開陸氏

記事番号:T00084215

 騰輝電子(ベンテック・エレクトロニクス)は、プリント基板(PCB)原材料の銅張積層板(CCL)、プレプリグ、アルミ基板の生産・販売を手掛け、アジアで唯一、軍需・航空分野の認証を受けているサプライヤーです。英ロールス・ロイスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)にエンジン用マザーボードを供給しており、自動車用発光ダイオード(LED)ヘッドライトのヒートシンク向け材料の市場シェアは世界首位です。

 2018年連結売上高は51億1,400万台湾元(約180億円)、1株当たり純利益(EPS)は6.75元でした。

顧客第一の営業姿勢

 董事長の労開陸氏は1955年に生まれました。家庭が貧しかったため、2人の兄は士官学校に進み、三男の労氏だけが大学に進学しました。

 卒業後は営業職として、当時の電子製品貿易最大手、定勤貿易に就職。何事にも細心の注意を払い、常に顧客を第一に考える営業姿勢でアップルやテキサス・インスツルメンツ(TI)などの大手から信頼を得ました。32歳で役員に昇格、シンガポール、ドイツ、米国の子会社設立を任され、年収は1,000万元に達しました。

 しかしその後、会社の財務リスクの悪化に気付いたため、顕在化する前に自社株を売り払って経営から手を引きました。

従業員重視の経営

 労氏は86年、3人の友人と45万元ずつ出資して佳海国際貿易を設立。定勤貿易と同様のビジネスを行わない旨を取り決めていたため、主に輸入業を展開しました。パソコン周辺機器の輸出入を手掛けた他、差別化戦略として、米スリーエム(3M)の大中華地区の代理店になり、テープや粘着剤を販売しました。

 従業員を大切にする経営方針を掲げて、ミスを許容し、その中から学ぶことを大切にしました。ある従業員が1,000万元の損失を出した際には、顧客やサプライヤーへの説明に連日同行しました。まずは状況の改善に努め、責任の追及は後回しにしました。

 また、地元を離れて暮らす従業員に対して、生活安定のために住宅購入の頭金支払いを援助しました。

 過去32年は黒字経営が続いており、離職率0%の記録を更新しています。

貿易業の経験で経営改革

 独立して3年後、古巣の定勤貿易は強引な拡大路線があだとなり、倒産しました。一方、佳海国際貿易は事業が軌道に乗り、投資部門を設立。02年に騰輝電子に投資し、労氏は副董事長に就任しました。ただ、経営理念の違いから、10年に董事会を離れました。

 騰輝電子は11~12年、年間3億元以上の赤字を計上しました。負債比率は93%に達し、銀行からは10億元の融資を断られました。業界関係者はいずれも同社の将来に悲観的で、誰もが危ない橋を渡ることを敬遠する中、労氏は董事会の招集に応じ、董事長に就任しました。1,000人余りの従業員を守ることが、自身に課せられた社会的責任だと考えました。

 経営体制はほぼ変更せず、改革に取り掛かりました。貿易業の経験を製造業に取り入れ、レッドオーシャンの携帯電話やパソコンなど消費者向け電子製品は避けて、軍需、航空、自動車、第5世代移動通信(5G)などのハイエンド製品市場に注力しました。海外事業では代理店経由での販売をやめ、英国、米国、ドイツに子会社を設置しました。

認証取得で商機拡大

 さらに、13年末にOEM(相手先ブランドによる生産)認証チームを設立。ライバルに先駆けて国際規格の認証を受けることで、商機拡大を目指しました。認証取得に特に手間が掛かったのは、防衛・宇宙航空産業界の品質マネジメントシステム国際規格「AS9100」でした。当時、AS9100の認証取得にこぎ着けたのは、騰輝電子と、100年以上の歴史のある電子部品・機能性樹脂材料メーカー、米ロジャースのみでした。労氏はその時の苦労について、「1年かけて認証を取得し、やっとロールス・ロイスのエンジンの受注できた」と語っています。

 専門ではない技術面では、全力で研究開発(R&D)チームを支援しました。大まかな方向性を決め、進捗(しんちょく)状況を確認しますが、資金や人材の調達は裁量に任せました。

 一方、得意とする国際貿易業のリソースを生かし、営業担当者により良いプラットフォームを提供、イノベーションを推奨することで、十分な力が発揮できる環境を整えました。

 この他、従業員の結束と士気を高めるために持ち株制度を導入しました。「倒産寸前だった企業には、誰も投資しないだろう」という見方もありましたが、労氏の手腕は、董事長就任から3年の業績データが証明しており、海外のプロ経営者から投資の約束を取り付けることができました。その後、100人の従業員が私財から投資して株主になりました。

 騰輝電子は16年、黒字に転換し、EPSは8.69元に達しました。19年4月には念願の上場を果たしました。

 

「社会人の常識」身に付けさせます!
台湾人向けセミナー 初級社員研修
講師:ワイズコンサルティング 高級顧問 荘建中
7月31日開講
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/79568.html

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。