コラム

記事番号:T00084716
2019年7月19日15:52

 鴻海精密工業は1974年、郭台銘(テリー・ゴウ)氏が設立し、町工場から世界最大のEMS(電子機器受託生産サービス)にまで育て上げました。米経済誌フォーチュンの2018年版世界企業500社売上高番付(フォーチュン・グローバル500)で24位にランクインし、18年連結売上高は5兆2,938億台湾元(約18兆4,000億円)に上りました。「富士康(フォックスコン)」の名でも知られ、世界16カ国・地域に生産拠点を展開、従業員は100万人を超えます。

 45年にわたり鴻海を率いてきた創業者の郭氏は、20年1月の総統選挙出馬を目指し、6月21日の株主総会後に董事長を退任。劉揚偉氏が7月1日付で新董事長に就任しました。

/date/2019/07/19/20honghai_2.jpg劉氏(左)。郭氏(中)は董事長退任時、鴻海に戻ることはないと表明したが、国民党の総統選公認候補には選ばれなかった(中央社)

半導体の専門家

 劉氏は56年生まれで現在63歳。交通大学電子物理系を卒業後、米国の南カリフォルニア大学で電子工学やコンピューターサイエンスの修士を取得しました。87年、米国でマザーボードメーカーを起業しましたが、その後、鴻海に売却しています。

 劉氏は07年、鴻海グループに加わり、郭氏の特別助理(特別秘書)を務めました。そのため、鴻海傘下の事業や今後の戦略に一定の理解があります。

 16年8月、鴻海はシャープを買収し、戴正呉氏がシャープ取締役社長に、劉氏は取締役に就任しました。シャープの半導体技術にも目を付けていたとみられています。

 17年、鴻海は半導体事業を担うサブグループ「S次集団」を設立し、劉氏が総経理に就任しました。

 鴻海が過去2年進めてきた半導体事業強化では、劉氏が主導となっています。例えば、中国・江蘇省南京市や広東省珠海市での半導体関連の大型投資計画は、劉氏が地元政府との交渉役を担いました。

郭氏に最も近い幹部

 劉氏が保有している鴻海の株式は65万6,000株と、幹部の中でも最も少なかったのですが、郭氏が劉氏を後継者に選んだのは半導体の専門知識以外に、今後10~20年の長いスパンで鴻海のために尽力する人材を求めていたからです。

 劉氏は近年、郭氏と最も近い関係の幹部でした。郭氏が媽祖(道教の女神)を参拝する時、ゴルフをする時、プライベートで牛肉麺を食べる時、劉氏はいつも同行していました。

 劉氏は、人を使う時には学歴と専門知識を重視し、部下の管理にはルールを重視しました。人を叱る時は穏やかでしたが、ロジックや道理を重視しました。部下がミスをしたり、いい加減な仕事をした時には、論理的だったかどうかを追及しました。

ワンマンから集団経営に

 鴻海は従来、郭氏の強力なリーダーシップの下、全てがスピーディーに決まりました。今は、郭氏の一言で決まるワンマン経営から、9人の共同経営委員会による集団体制に移行しました。共同経営委員会は毎週月曜に開催され、重大議案は3分の2以上の賛成を得れば、董事会が承認するか判断します。

 劉氏が率いる新経営陣は、各事業で利益を上げ、鴻海グループの成長を実現できるのでしょうか。ポスト郭台銘の鴻海は始まったばかりです。

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シニアコンサルタント

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