記事番号:T00085871
華新科技(ウォルシン・テクノロジー)は台湾2位の受動部品メーカーで、積層セラミックコンデンサー(MLCC)とチップ抵抗器では世界上位です。
董事長の焦佑衡氏は1961年生まれ。米国のゴールデンゲート大学で経営学修士(MBA)課程を修了後、日本の大和証券でアナリストとして勤務しました。英語と日本語が堪能な上、アナリストとしてさまざまな産業に触れたことが、事業を行う上での礎となりました。
焦氏は91年に帰台。長兄と相談し、発光ダイオード(LED)大手、万邦電子を買収しました。その後、父親の焦廷標氏が創業した華新麗華(ウォルシン・リーワ)がスピンオフ(分離・独立)した受動部品事業を合併し、92年に華新科技に社名変更しました。
3億元の大損失
焦氏は、これまでに2回の大きな挫折に直面しました。
98年、受動部品業界の景気が悪化し、製品価格が2~5割下落しました。その結果、上場したばかりの華新科技の株価は30台湾元(約105円)から1カ月で8.65元まで下落し、1年で資本金の4分の1に当たる3億元の損失を計上しました。
焦氏は赤字に直面し、会社売却を考えました。99年、受動部品最大手、国巨(ヤゲオ)の陳泰銘董事長に、売却を持ち掛けました。ある日の正午、台北市内のホテルで会合の場を持ちましたが、ヤゲオの提示価格に納得できず、合意に至りませんでした。
受動部品業を学び直し
焦氏は、売却ができなかったことで、絶対に結果を出そうと考え、経営の問題点を分析しました。その結果、製造、生産管理、技術、人材など、何一つ優位を持つものがなかったと分かりました。
しかも、自身は上に立つ立場にありながら、工場や技術など何も理解していなかったことにも気付きました。焦氏はそれまで、設備購入や工場の報告書に対し、何でも許可していました。そのため、設備と技術が合っておらず、良品率はわずか40~50%でした。
そこで焦氏は、受動部品を一から学ぶことにしました。まず、フィリップスの高雄建元工場の受動部品部門を管理していた陳春貴氏に、華新科技の顧問と技術生産副総経理を何とか引き受けてもらい、受動部品の基礎と製造工程について教えを請いました。
ヤゲオが提訴
2回目の挫折は、ヤゲオに提訴されたことです。
華新科技は良品率が50~90%に上昇した上、景気が回復し、株価は99年の12元から、2000年4月には328元まで上昇しました。時価総額は462億元に上り、当時の資本金18億元を大きく上回りました。
焦氏は、首位のヤゲオに挑戦しようと、ヤゲオが買収したフィリップス建元工場の研究開発(R&D)者68人のうち、幹部37人を引き抜きました。ヤゲオの陳董事長は、不当な引き抜きで、秘密保持契約に違反するとして、華新科技を提訴し、30億元の仮差し押さえを申し立てました。
当時、華新科技の資本金は26億元でした。焦氏は身を隠し、兄らが矢面に立って対応し、両社は和解しました。
品質の安定は従業員から
焦氏は、若い時に己の限界を知り、2回の挫折で「謙虚さ」と「計画を立ててから行動すること」の大切さを学びました。また、ビジネスは大きければ成功するわけでなく、良きライバルがいてこそ強くなると語っています。
華新科技は、企業の成長は人材が鍵と考え、1~2年ごとに従業員満足度調査を実施しています。焦氏は、企業は業績ばかりを追い求めると、目先のことしか見えなくなりますが、業績と人情のバランスを取れば、人事が安定し、製品の品質も安定すると語ります。
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