記事番号:T00000081
まず台湾駐在が決まって最初の仕事は前任者からの引継です。
前任者は、自分の経験の失敗や成功、或いは社内の情報や顧客の状況など、様々な情報を後任者に伝えてくます。
しかし後任の方は海外に駐在になったばかりで、多くの事がまだ実感できていないのと、毎日新しく覚えなくてはならない事がたくさんあり、とても頭に入りきらないのが現実です。
また、十分な引継期間を取らない企業も多く、実質的には引継をしなかったという方もよくお聞きします。
これらの理由で、引継事項の多くは後任者に伝わらず、企業には台湾のノウハウも蓄積されていないケースを多々お見受けします。
●A社の事例
A社の總経理である松沢氏は自分が台湾に来た頃、その前任者から何も引継がなく非常に苦労した駐在生活を送ってきた。
お陰で振り返ってみると駐在生活の5年間で重要な経営課題はほとんど手つかずのままである。
後任者には自分がしてきた苦労をせずに、すぐに重要な経営課題に取り込める様に、経験してきた事をマニュアルとしてまとめ、新任の岡崎氏に手渡した。
・・・それから5年後。
岡崎氏の長かった台湾駐在が終わり、来月には日本へ帰任が決まった。
この5年間の駐在期間を振り返ってみると、赴任前に描いていたような成果は挙げられなかった。
そう考えながら後任者への引継の準備をしていた時、前任者の松沢氏から引き継いだ「台湾マニュアル」が出てきたのだ。
赴任になった頃は「たいしたものでない」と思っていたが、読んでみると結構役に立つ事が書かれていた。
岡崎氏の後任者が来て引き継ぎをする際、「私の前任者がこの様なマニュアルを残してくれた。私は全く使わなかったが・・・」とマニュアルを手渡した。
「たぶん、こいつも使わないだろうな。」と思いながら・・・。
ワイズコンサルティング 吉本康志