第167回 TSMC総裁兼副董事長 魏哲家氏


コラム 台湾事情 作成日:2020年6月19日

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第167回 TSMC総裁兼副董事長 魏哲家氏

記事番号:T00090628

 ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏は2018年6月、会社を代表し、董事会(取締役会)を率い、対外関係や政府との関係を担う董事長の座を劉徳音(マーク・リュウ)氏に引き継ぎました。総裁(執行長、CEO、最高経営責任者)の実権は魏哲家氏に譲り、2人が協力して導いてほしいとTSMCを託しました。

/date/2020/06/19/20tsmc_2.jpg魏総裁(左)。劉董事長(右)は9日の株主総会で、新型コロナウイルス感染症が第5世代移動通信(5G)需要を押し上げ、TSMCの安定成長が続くと語った(中央社)

 TSMCは米国式のCEOが率いるマネジメントとなりました。劉董事長は実際の運営には関与しませんが、執行長の状況を把握し、助言します。魏総裁は、研究開発(R&D)、製造、サプライヤー管理、営業、運営管理など、内部統制の部門以外の従業員4万8,000人を一人で指揮します。TSMCで最も権力のある人物です。

 TSMCは昨年の連結売上高が1兆700億台湾元(約3兆9,000億円)と過去10年で最高になり、純利益は3,452億6,000万元、1株当たり純利益(EPS)は13.32元に上りました。

優れた営業センス

 魏氏は1953年に生まれ、交通大学電気工程学系の学士と修士を取得後、米国コネチカット州ニューヘイブン市のイェール大学で電気工学の博士課程を修了しました。

 交通大学時代は図書館に入り浸って勉強しており、同級生に「K王(ガリ勉)」といわれる一方で、実験室のムードメーカーでした。

 イェール大学時代は、見ず知らずの新入生を空港まで往復3時間以上かけて出迎えに行ったりと、熱心に人助けする魏総裁のことは知り合った台湾人の同級生らにとって忘れられない存在でした。

 魏氏は卒業後、テキサス・インスツルメンツ(TI)で勤務し、1998年にTSMCに入社しました。TSMCでは、スマートフォン時代の功労者です。英ARM(アーム)との提携を提案し、スマホ用プロセッサーの生産の基礎を築きました。業務開発部門に異動となると、モバイル市場に照準を合わせ、クアルコム、エヌビディアなどの大口受注を獲得し、アップルという最大の顧客も手に入れました。

ストレートな物言い

 厳格で寡黙なTSMCの幹部の中で、魏氏は、歯に衣(きぬ)着せぬストレートな物言いで知られています。イエスはイエス、ノーはノー。遠回しな言い方はしません。董事長や上司の前でもイエスマンになることはなく、相手と異なる考えでも遠慮なく口に出し、行動力もあります。

 魏氏は副総経理の候補となった際、厳格で理想が高い張董事長(当時)に対し、「張董事長。私が聡明(そうめい)なのか、才能や知恵があるのか、いくら疑ってくださっても構いませんが、TSMCに対する忠誠心は疑いようがありません」と言いました。その場にいた誰もが、なんて物腰柔らかくスマートなのかと感じ入りました。和やかな雰囲気が広がり、董事長も厳しく応じられなくなりました。

品質には厳しく

 魏氏は就任後、以前より厳しくなりました。幹部を大幅に入れ替え、サプライヤーを見直しました。強敵のサムスン電子に対抗するため、設備投資は過去最高に引き上げました。TSMCの株価、時価総額が過去最高を更新した、陰の立役者です。

 特にサプライヤー管理を重視するようになりました。ある半導体材料の代理店の幹部によると、以前はTSMCに出荷する優良サプライヤーは検査を受ける必要なく、自社の品質検査レポートを提出するだけでよかったけれども、今は第三者機関の品質レポートを自費で取得し、提出しなければならなくなりました。

 TSMCは、自社で再検査するため、品質検査の新部門を設立しました。また、1社が独占的にTSMCに供給していた製品は、2社目のサプライヤーを確保し、品質管理の基準も引き上げました。  TSMCは疑惑が生じないよう、調達担当者とサプライヤーがゴルフをしたり、プライベートで接触したりすることを禁じています。

 一方で、魏氏は従業員に対する思いやりがあります。会議が夜遅くなると、これ以上質問するのはやめておくよと笑います。追求すれば、それに応えるため従業員が夜中まで忙しくなることを知っているからです。

 米中貿易戦争に直面し、昨年の全世界の半導体業界の売上高は前年比12%減少しましたが、TSMCは成長を続け、奇跡を積み重ねています。魏氏は創業者の張忠謀氏の期待を裏切りません。

 

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シニアコンサルタント

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