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友達光電(AUO)は1996年設立の液晶パネルメーカーです。2019年は192億台湾元(約690億円)もの純損失を計上しましたが、今年第1四半期はパネルのオファー価格が上昇しており、第2四半期も引き続き上昇が見込まれることから、下半期は黒字転換が期待されています。
最適規模で中国メーカーに勝負
AUO董事長の彭双浪(ポール・ポン)氏は59年生まれ。台北工業専科学校(台北科技大学の前身)を卒業後、英国のヘリオット・ワット大学で経営学修士(MBA)を取得しました。98年にAUOのサプライチェーン副総経理に就任し、資材部門や製造部門、マレーシア赴任を経て、01年に海外初の製造拠点となる中国江蘇省の蘇州工場の設立に携わり、同工場の総経理を4年間務めるなど、AUOでのキャリアのうち海外駐在が3分の1を占めます。05年に台湾に戻り、情報ディスプレイ事業部門の総経理に就任しました。
11~12年にAUOは資本金を上回る赤字1,150億元を計上しました。当時の李焜耀董事長の片腕を担い、13年に黒字転換を果たし、彭氏は15年に董事長に抜てきされました。
董事長就任後は「価値転換」を図りました。大規模な生産能力で勝負するのではなく、最適規模で技術革新を進めました。中国のパネルメーカーの資金力と大規模な生産能力という逆風の中、18年まで6年連続で黒字を計上しました。
「対話」と「手紙」
黒字転換までの道のりは、社員の自信を取り戻すことから始まりました。総経理就任後、オフィスを出るときには必ず背筋を伸ばし、胸を張るようにしました。新聞や雑誌を見れば、会社の経営状況がひどいことはすぐに分かります。トップが厳しい表情をしていては、会社の士気が上がるはずがありません。
また、いつも社員食堂に足を運んで食事を取り、彭氏の自信のある姿を社員に見せるようにしました。
さらに、「ポールとの対話」という時間を設け、社員から会社の問題提起を受け付けたり、毎月「ポールからの手紙」と称して社員に対し、会社の将来の展望を伝えたりしました。
当初「ポールとの対話」で聞かれたのは表面的な話ばかりでした。彭氏は、本心を話せる社風が必要と考え、率直かつ誠実を心掛け、話を記録しただけで終わりにせず、必ずその場で回答し、行動に移しました。成果はすぐに表れ、社員は本質的な問題を進言するようになりました。
サックスから京劇まで
社員のワークライフバランスのため、彭氏は社内に100種類ものクラブ活動を設立しました。見本となるべく自身も13年にサックスを習い始め、趣味の域を超えたレベルまで到達。翌年には副総経理以上の幹部に声をかけてサックス楽団「WOW SAX」を結成しました。
この名前には、演奏を聞いた人に「ワォ!」と驚きの声を上げてほしいとの思いが込められています。「同じ楽器を一緒に練習することで、趣味を共有し、共通のコミュニケーション手段を得られるだけでなく、職場でも打ち解けられる」と彭氏は実感しました。
後に、楽団は実力を試すため、新竹県と新竹市の街頭芸人(ストリートパフォーマー)免許取得に挑戦し、見事合格。地方政府公認のパフォーマーとしてデビューしました。
頭が固くなりがちな技術者がオープンマインドを持つためには、専門分野を超えてアートを学ぶことが大切だと考える彭氏は、街頭演奏の他、幹部に京劇の国光劇団での学びの機会を与えました。自らも劇団での経験の中で、▽革新▽基礎練習▽チームワーク▽感謝を忘れないこと▽美意識を取り戻すこと──の五つの心のマネジメント手法を学びました。
彭氏が率い「規模より価値」を追求するAUOは、付加価値の高い少量多品種の製品で市場を開拓し続けています。
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