第164回 大甲鎮瀾宮副董事長 鄭銘坤氏


コラム 台湾事情 作成日:2020年3月20日

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第164回 大甲鎮瀾宮副董事長 鄭銘坤氏

記事番号:T00088963

 台湾には2,000を超える媽祖廟(まそびょう)があります。媽祖とは、航海・漁業の守護神として台湾をはじめ中国大陸沿海部で信仰を集める道教の女神のことです。

 今やどこの媽祖廟でも媽祖グッズを販売していますが、台中市大甲区の鎮瀾宮は最も成功した「スゴ腕」です。台湾各地の分院と連携し、最新のマーケティング手法によって年々頭角を現し、台湾で最も人気のある媽祖「企業」となっています。

商機30億元

 鎮瀾宮といえば、媽祖の誕生日(旧暦3月23日)に合わせて毎年行われる巡礼行事「大甲媽祖遶境」が有名です。鎮瀾宮に祭られる媽祖像を神輿(みこし)に乗せて信徒が担ぎ、台中市、彰化県、雲林県、嘉義県の約340キロメートルを110以上の廟に立ち寄りながら、9日間をかけて徒歩で練り歩きます。

 信徒100万人以上が参加することからメッカ巡礼、バチカンのクリスマス・ミサと並び「世界三大宗教イベント」の一つにも数えられています。

 台中市政府の推計によると、大甲媽祖遶境は毎年30億台湾元(約110億円)以上の「媽祖商機」を創出しています。ただ今年は新型コロナウイルス感染拡大で、開催延期となりました。

鎮瀾宮の媽祖巡行、一夜で一転延期決定
https://www.ys-consulting.com.tw/news/88593.html

ビジネスへの嗅覚

 大甲媽祖遶境を取り仕切っているのが、鄭銘坤副董事長です。鄭氏は、子どもの頃には市場で野菜を売り、若い頃は料理人で、レストランを開いた経験もあり、実践で培ったビジネスへの鋭い嗅覚を持っています。

 今から20年前、鄭氏が36歳の時に鎮瀾宮の副董事長に就任しました。鄭氏は就任後すぐ、信徒の高齢化という危機を嗅ぎ付けました。

 鄭氏は「新規顧客開拓」のため、300年近い歴史ある鎮瀾宮のブランドに若者に目を向けさせようと、次々と新たな試みを打ち出しました。

伝統を打ち破れ

 かつての大甲媽祖遶境は、嘉義県新港郷の新港奉天宮まで巡行した後、廟の中で媽祖生誕祝賀式典を行っていたので、少数の信徒しか媽祖を拝むことができませんでした。

 そこで鄭氏は2001年、長年の伝統を打ち破りました。媽祖を廟の外に出したのです。広場に設置した祭壇で式典を行い、外で待つほかなかった信徒も媽祖を拝めるようにしました。

 これにより、若者は神秘的な宗教儀式ではなく、にぎやかな祝賀イベントに参加しているという気分になりました。03年には若い信徒が自発的に「大甲鎮瀾宮e世代青年会」を組織し、活発な意見がもたらされるようになりました。

媽祖のキャラクター化

 鎮瀾宮は04年、台湾で初めて媽祖をキャラクター化しました。媽祖に親しみを感じてもらうための第2弾で、鎮瀾宮の収入増の第一歩ともなりました。

 キャラクター化した媽祖は若者に人気が出て、多額の収入をもたらしました。媽祖グッズを販売する大甲媽祖文創館(台中市大甲区)だけでも毎年売上高は3億~4億元に上ります。媽祖のキャラクター使用のライセンス収入は商品によっては数百万元から1億元近いものまであります。

 鄭氏は06年、媽祖の神輿の上にカメラと全地球測位システム(GPS)を取り付け、現在どこを巡行しているのかインターネットで見られるようにしました。台湾初の試みです。

 他にも▽マラソン▽ストリートダンス▽ファッションショー▽コスメ販売──など、公序良俗に反しないものなら、どんなイベントでもチャレンジし、若者の参加を増やしました。

大手企業とコラボ

 鎮瀾宮は19年、オンラインゲーム大手の遊戯橘子数位科技(ガマニア・デジタル・エンターテインメント)と提携し、オンラインおみくじを開始しました。また、台湾のモバイル決済サービス「台湾ペイ」と提携し、QRコードでさい銭を払えるようにしました。

 通信キャリア最大手の中華電信、石化大手の台塑集団(台湾プラスチックグループ)、トヨタ自動車の台湾総代理店である和泰汽車、パソコン大手の華碩電脳(ASUS)や宏碁(エイサー)などとも次々と提携しました。

 中部の一つの廟でしかなかった鎮瀾宮はこの20年で、台湾の誰もが知る全国区の廟となりました。ポジショニングやターゲット選定が適切ならば、300年という老舗の看板も輝くのです。

 

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荘建中

荘建中

シニアコンサルタント

難しい事をわかりやすく伝えるプレゼン力はワイズNo.1、毎年セミナーや研修で200回/年を越える講演を行っている。

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