第178回 宏福実業集団創業者 張聡淵氏/台湾


コラム 台湾事情 作成日:2021年5月21日

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第178回 宏福実業集団創業者 張聡淵氏/台湾

記事番号:T00096274

 米経済誌フォーブスが発表した、2021年台湾長者番付の首位に、製靴世界2位、宏福実業集団の創業者、張聡淵氏(74)が躍り出ました。総資産は138億米ドルと、台湾で唯一100億米ドルを超え、鴻海精密工業創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏など歴代首位を上回りました。

 宏福の中国法人、中山華利実業集団が20年末、深圳証券取引所に上場しました。持ち株比率が87%の張氏一族は、株価の大幅上昇に伴い、総資産も跳ね上がりました。6日時点の終値で、華利実業の時価総額が1,185億7,000万人民元(約5,134億台湾元=2兆円)に上ったため、張氏一族の総資産は4,466億台湾元以上だと推算できます。

 台湾は、世界生産量の7割以上を占める製靴大国。宏福は、製靴最大手、宝成国際集団(PCG)に次ぐ世界2位です。工場は、中国の福建省、広東省、河南省や、ベトナム、ドミニカ共和国などに20基以上あります。年産量は1億8,000万足以上で、うち8割がスポーツシューズです。20年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行で打撃を受け、従業員は13万6,000人から11万人まで減少しました。

中国合弁から誕生

 張氏は1948年生まれ。専科学校を卒業後、雲林県斗六市の製靴工場で管理職に就き、後に宏福を創業しました。

 張氏は、人目を引くような行動はしません。工場は十数年前から海外に移転し、同業とはほとんど交流がなく、業界団体にも加盟していませんでした。90年代、工場を中国に移転後、合弁で新灃集団(シンフォニー・ホールディングス)を設立し、スポーツシューズの受託製造を行いました。新灃は株式上場後、多角化を進め、ポニーやアリーナなどの自社ブランドを立ち上げたほか、伊藤忠商事と提携したり、不動産投資を行うなど、製靴事業の構成比が縮小していきました。

 00年以降、人件費と運営費用が急上昇し、新灃は13年に製靴事業を売却することとなりました。そこで張氏が引き受け先となり、社名を華利実業へと改めました。

大規模買収で事業強化

 張氏は、家族とともに華利実業に全力を注ぎました。製靴業は他の労働集約型産業と同様、人件費の上昇に直面し、頭打ちの状態でした。そこで張氏は、他の台商(海外で事業展開する台湾系企業)同様、ベトナムに生産拠点を移転しました。今やベトナムが生産の中心です。

 張氏は、華利実業の株式を上場するため、大規模なM&A(合併・買収)を行いました。香港法人を通じ、ベトナムとドミニカ共和国の製靴工場15基と、貿易会社24社を買収しました。華利実業の子会社も、香港で15社を買収しました。台湾は材料の調達、広東省中山の本部は設計・開発と貿易の決算を行う拠点、その他は製造拠点と、分業体制を整えました。

コスト重視とスマート化

 華利実業の顧客は、ナイキやコンバース、プーマ、コロンビアなど、世界10位以内のシューズブランドが含まれます。

 製造業の競争力は、コストが左右します。張氏は大富豪でありながら倹約家で、従業員と社員食堂で食事を取ります。コスト管理に厳格で、週休1日で働きます。

 事業が年々拡大する中でも、製靴の技術強化と製造工程の改善に努め、技術とサービスで競争力を維持してきました。

 華利実業は、生産開発に3次元(3D)プリント技術やVR(バーチャルリアリティー、仮想現実)技術を導入しています。また、製靴業界では珍しく、シューズのアッパー部分の編み構造にコンピューターのソフトウエアを使用しています。近年は、製造のスマート化や設備管理の自動化を進めました。

ベトナムで医療支援

 張氏は、お世話になった土地に対する恩を忘れません。最大の生産拠点であるベトナムに、毎年多額の寄付をしています。16年に250万元を寄付し、先天性リンパ管腫を患っていた女児が台湾で治療を受けられるようにしました。18年にもベトナムの5歳の男児が台湾で治療できるよう援助しました。

 宏福の製靴工場はアジアだけでなく、中南米にもあります。中南米に駐在する社員は、毎年3回、16日間の休暇を取得し、台湾に帰ることができます。中国やベトナムの駐在員であれば、毎年10回の帰台が約束されています。

 

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