第180回 ウィストロン董事長 林憲銘氏/台湾


コラム 台湾事情 作成日:2021年7月16日

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第180回 ウィストロン董事長 林憲銘氏/台湾

記事番号:T00097283

 電子機器受託生産大手の緯創資通(ウィストロン)は、情報通信技術(ICT)産業を代表する世界的メーカーの1社です。従業員は世界に8万人以上、2020年の連結売上高は8,450億台湾元(約3兆3,000億円)で、米経済誌フォーチュンの世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」で452位にランクインしました。

受託生産事業の分社化

 ウィストロン董事長の林憲銘氏は、交通大学(現・陽明交通大学)の計算・制御エンジニアリング(現・情報エンジニアリング)学科出身で、1979年にパソコン大手、宏碁(エイサー)に入社しました。エイサーグループで重要な職務を歴任後、総経理にまで昇進しました。

 00年、エイサーはブランド事業と受託生産事業の兼ね合いに難航し、新規顧客の獲得に苦戦していました。林氏は、エイサーの創業者で当時の董事長の施振栄(スタン・シー)氏に、受託生産事業の分社化を提案しました。ハイテク産業では、それまでなかったアイデアですが、施氏も同じことを考えていました。

 01年5月、ウィストロンが設立されました。台湾で初の事例となった、ブランド事業と受託生産事業の分離は、企業の機動性を向上させ、長期的な成長に寄与しました。

従業員と朝食会

 ITバブル崩壊後の01年、ウィストロンは従業員の相次ぐ離職に直面しました。董事長に就任した林氏は、まず社内を安定させるとして、優秀な人材を引き留めるため、高い給与を提示しました。また、企業のビジョンや方針、重大決定を毎月、手書きのコラムにしたため、従業員との対話を心掛けました。

 この他、林氏は朝7時半から、経営陣、リーダーら、イノベーション担当チームの3つのグループとそれぞれ朝食をとり、声に直接耳を傾けました。多くの重要な議題は、朝食の場で決議されました。

サーバーを顧客に直接販売

 03年8月、ウィストロンは株式を上場しました。

 04年、ウィストロンは初めて赤字に転落しました。林氏は当時の運営効率の悪さを、主力製品のノートPCに例え、使用するねじの数が競合より格段に多い状況と表現しました。組織改革を決断し、シックス・シグマ(モトローラが開発した経営手法)を導入して、2年がかりで社内の共通認識を形成しました。企業体質の改善で、05年から世界金融危機後の11年まで成長が続きました。

 12年、クラウドコンピューティングの将来性を見据えた林氏は、サーバー受託生産の緯頴科技服務(Wiwynn)を分社化し、19年に株式を上場しました。ODM(相手先ブランドによる設計・生産)が顧客に直接販売する、業界初のビジネスモデルで、世界的なクラウドサービスプロバイダーを顧客に取り込むことに成功しました。

IP蓄積で新分野に参入

 林氏は従業員に対し、1日の20%の時間を、新しい物事に触れ、考えることに使うよう求めています。

 林氏自身も失敗を顧みず、6年間で毎年20億元を16社のスタートアップに投資しました。知的財産(IP)の獲得が目的です。蓄積した知的財産を使って、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)やグローバル展開を推進し、本業である受託生産事業から▽クラウドコンピューティング、▽ソフトウエアサービス、▽ソフト・ハードの統合、▽モノのインターネット(IoT)、▽スマート医療、▽電気自動車(EV)──など他分野へ参入しました。

独自の企業年金制度

 林氏は、かつて経営幹部や管理職は中国語さえ話せればよかったものの、ベトナム、マレーシア、フィリピン、インド、チェコなど海外生産拠点の拡大に伴い、グローバルサプライチェーンを管理するため、グローバル人材が必須になったと言います。

 20年、ウィストロンは優秀人材の引き留め策として、独自の企業年金制度を創設しました。従業員が任意で給与の一部を拠出し、それと同額を会社も拠出し、合計金額で自社株を購入することで、資産形成を支援します。規定の年数まで勤務すれば、従業員に還元されます。

 ウィストロンは、今後もテクノロジー、組織、人材に注力し、ハイテク業界で世界トップクラスの企業へと発展することでしょう。林氏の下、ウィストロンの社員は、単なる組織の歯車ではなく、価値で周囲の人を助ける志事人(仕事人)となることでしょう。

 

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