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第179回 メディアテック董事長 蔡明介氏/台湾


コラム 台湾事情 作成日:2021年6月18日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第179回 メディアテック董事長 蔡明介氏/台湾

記事番号:T00096779

 IC設計最大手、聯発科技(メディアテック)は、第5世代移動通信(5G)対応スマートフォン用チップ「天璣(Dimensity)」シリーズがけん引し、2020年の連結売上高が前年比30.8%増の3,221億台湾元(約1兆2,800億円)となりました。米ドル換算で100億米ドルを初めて突破したことを記念し、董事長の蔡明介(ミンカイ・ツァイ)氏は、傘下企業を含む従業員1万7,000人に、1人当たり10万元の特別ボーナスを支給しました。

年収は業界首位

 IC設計業で勝負の決め手となるのは、知力です。優秀な人材を採用できるかが、成功するための大前提となります。そのため蔡氏は、従業員のニーズを満たすことに特に心を砕いています。

 メディアテックでは、従業員の意向を尊重し、技術革新を求めたい人材には、研究開発(R&D)以外の雑務を極力させません。幅広い交友を好む人材には、営業をさせます。

 また、上司は残業を強制しませんが、残業したければ、残業できます。台湾のハイテク企業では珍しく、いわゆる責任制(裁量労働制)を導入しておらず、残業時間に応じて残業手当を支給しているようです。年収は平均270万元と、IC設計業の首位です。

 21年第1四半期の純利益は257億7,700万元、1株当たり純利益(EPS)は16.21元と、過去最高を更新しました。IC設計業では世界4位、半導体業全体では世界8位に浮上しました。

米国で技術習得

 蔡氏は1950年に生まれ、屏東県の農家で育ちました。台湾大学電機系を卒業後、米国に渡り修士号を取得しました。

 修士号取得後の76年、工業技術研究院(工研院、ITRI)が米家電メーカー、RCAと、半導体技術移転契約を締結しました。選抜者をRCAに派遣し、当時最新の半導体技術を学ばせ、台湾に技術移転する計画が持ち上がりました。

 計画を知った蔡氏は、面接のためニューヨークに飛んでいき、見事合格しました。工研院電子センターの米国派遣の第1期生19人の1人に選ばれました。

 RCA派遣後、台湾に戻ってからの7年間は工研院電子センターでIC製品の開発を担当しました。

 その後、台湾初の半導体メーカー、聯華電子(UMC)に入社し、IC設計の研究開発(R&D)チームを立ち上げました。米国から技術移転を受けたり、工研院と提携したりしながら、UMCのIC設計部門の実力を付けていきました。

メディアテック誕生

 95年、UMCはファウンドリーに転換し、IC設計部門はスピンオフ(分離・独立)することになりました。そのうちの1社が、蔡氏が率いるメディアテックで、97年に設立されました。

 蔡氏は強いリーダーというよりは、策略に富んだ知識人タイプで、周りの意見によく耳を傾けます。決断を下す前には、思い込みを捨て、論理的に思考を重ねます。意思決定は速くありませんが、間違えることはほぼありません。

 メディアテックは2001年、携帯電話のチップへの参入を決定しました。インフィニオン・テクノロジーズやテキサス・インスツルメンツ(TI)など欧米の大手と渡り合うため、蔡氏は04年、2.5Gのマルチメディア携帯電話ベースバンドチップセットの提供を開始しました。このチップセットさえあれば携帯電話が生産できるターンキーモデルで、2年で中国の携帯電話用チップ市場で最大手となりました。中国の山寨機(さんさいき、ノーブランド製品)時代に当たり、メディアテックは世界のIC設計業の売上高10位に成長しました。

低迷期でも人材投資

 10~13年になると、山寨機のターンキーモデルによる成長が頭打ちと感じるようになりました。そこで、社外から招いた優秀な人材を高いポジションに就け、社内に緊張感と競争心を作り出し、組織活性化を図りました。

 13年、メディアテックはオクタコア(8コア)の3G対応携帯電話用チップを発表し、クアルコムに正面対決を挑みました。メディアテックのチップは、LGエレクトロニクスやボーダフォン、モトローラなどの大手ブランドに採用され、山寨機向けからの脱却に成功しました。14年売上高は2,131億元、純利益は464億元を記録しました。

 4G対応の携帯電話が主流となった15~18年、メディアテックは再び低迷期に陥りました。年間の利益は14年の半分以下にまで落ち込みました。それでも、研究開発の手は緩めず、累計2,200億元を投じました。

 また、世界から一流の人材が集まるよう労働環境を整え、従業員向けの託児所やレジャー施設、ジムを設置するなど、福利厚生を手厚くしました。

 

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荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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