記事番号:T00000104
● 貿易会社起業でよく見かけるパターン
三好さんは台湾に駐在5年目の駐在員である。
三好さんはネアカな性格も手伝い、台湾社会に順応しており、日本人台湾人に限らず、仕事以外でも知人や友人が多かった。
そんなある日、台湾人の友人からビジネスの話を持ちかけられた。
友人の会社でいつも使っているある部材の仕入れコストが高すぎるので、同様の部材でもっと安いものを探せないかとのことであった。
この部材は日本企業しか製造できないもので、三好さんは知人や友人に連絡し、同様の部材を見つける事ができた。
但し、三好さんが見つけた部材を製造している企業は海外ビジネスの経験がなく、台湾における代理店も存在しなかった。
「この部材を輸入販売する貿易会社をつくってはどうか?」という三好さんの友人の提案に背を押され、三好さんは独立起業することになった。
1年目は、大儲けはしなかったもののサラリーマン時代より多い収入を手にする事ができた。
2年目には、台湾企業が同様の部材を作り始めたが、まだ競争力がなかった。
3年目になると、競合である台湾企業が力を付け始め、価格競争を仕掛けてくる様になった。
4年目、三好さんの会社の売上は大幅な減少に見舞われている。
三好さんはあわてて次の商材を探し始めたものの、資金力や販売チャネルが必用等、そう簡単に良いビジネスが見つかるわけもなく苦労している…
● 貿易業起業のポイント
貿易業で起業する場合、一番大事なのは現在商材が有るか無いかではなく、「買い手のニーズを掴む立場にある」或は「商材が集まってくる仕組みやルートがある」ことです。
三好さんの事例では、目先のビジネスチャンスを掴み起業したところまでは良かったのですが、現在の商材の競争力が有るうちに、新たな商材開発ができる仕組みづくりを行う事が肝要でした。
起業間もない頃の貿易業経営者の重要な仕事は
1. 商材を見つける
2. 販売ルートを確立する
3..資金を手当てする
であります。
最初の商材が上手くいくと、ついつい危機感を感じずに、社長自ら貿易実務を行いがちですが、これでは次の商材開発ができません。
また、一般的に貿易業で儲かる商材とは、川上の商材で、一度ルートを付けてしまうと後は黙っていてもオーダーが入る様な商材です。
一般消費者向けの商材は誰でも見つけやすいのですが、新規参入者が多く、また売り手の立場も弱い為苦労します。
素人にはわかりにくい商材を見つけ出すことが、商材開発のポイントです。
ワイズコンサルティング 吉本康志