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第78回 美利達工業董事長 曽崧柱氏


コラム 経営 マーケティング 台湾事情 作成日:2012年4月6日

台湾流経営策略

第78回 美利達工業董事長 曽崧柱氏

記事番号:T00036369

  台湾の自転車大手と言えば、巨大機械工業(ジャイアントMFG)と美利達工業(メリダ)ですが、第25回でジャイアントを紹介しましたので、今回はメリダの曽崧柱董事長を紹介します。

 曽董事長は、メリダの2代目の経営者です。1983年に兵役を終え、同社のエンジニアからキャリアをスタートしました。その後課長、経理、総経理補佐などの役職を経て95年に総経理、そして、今年始めに同社の創業者であり、父である曽鼎煌氏が他界したため、董事長の座に就きました。

自社ブランド「MERIDA」設立

 メリダは72年創業で、当初は主に米国企業の受託生産を行っていました。その後88年に自社ブランド「MERIDA」を立ち上げ、北欧のノルウェーを出発の地とました。同社はノルウェーを選んだ理由を「当時の受託生産の顧客は米国と西欧で、市場が重ならないこと、また、たとえうまくいかず台湾に逃げ帰っても、台湾までは失敗のうわさは広まらないだろうと考えた」と説明しました。以後、受託生産と自社ブランドの2本柱で展開してきました

海外進出とブランドイメージ

 90年、同社は「中国市場での早期の地位確立」が成功の鍵と考え、工場建設に取り掛かりました。当時現場を指揮したのが曽董事長でした。曽董事長は農家で寝泊まりし、朝早くから現場を監督、家に戻ると風呂に入る、唯一の楽しみはラジオを聞くこと、という生活を丸1年送りました。つらい日々ではあったものの、現地市場を観察する絶好の機会となり、メリダの中国市場進出の基礎を固めました。メリダは中国市場ではミドル・ハイエンド市場に狙いを定めました。中国人はブランド信仰が強いので、ブランドイメージを築くために量販店販売を避け、直営店販売に絞ることで価格競争に陥らないようにしました。また、価格破壊を防ぐため、低価格帯のサブブランドを立ち上げる作戦に出ました。

 01年、メリダの米国第2の顧客であるスペシャライズド社の財務危機を知り、10億台湾元の投資を決め、49%の株式と100%の生産権を得ました。スペシャライズド社は知名度の高い高級ブランドで、曽董事長は「ブランドは必ずしも自ら作るものではない、現地ブランドを買う方がスピーディーに国際化が進められる」と語りました。

 そして、曽董事長は合弁企業を設立し、共同経営という形で経営拡大を進めました。販売を現地の会社に任せることでメリダは研究開発と生産に注力することができました。欧州の子会社8社では株式の30~40%を取得し、社名を「Merida Germany」のように、「メリダ+国名」としました。

垂直統合によるブランド確立

 その後、ドイツに研究開発(R&D)センターを設立し現地のデザイナーを募集しました。そして、プロチームのスポンサーになり、F1で使用されているセンサーを自転車、選手に取り付け、乗り心地や損傷具合などのデータを得ることができるようになりました。このようなデータを生かして作られた設計図が台湾に引き継がれ、製作に至っています。次第に同社の自転車は注目を集めるようになっていきました。

 05年には「i Design」という、消費者がインターネットで、色やパーツをカスタマイズしてオリジナルの自転車を製作できるサービスを始めました。

 曽董事長は、合弁を通じた垂直統合による、製造、販売、サービス能力こそが、メリダブランドの経営方針と語っています。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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