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第82回 信義房屋董事長 周俊吉氏


コラム 経営 人事労務 台湾事情 作成日:2012年8月3日

台湾流経営策略

第82回 信義房屋董事長 周俊吉氏

記事番号:T00038592

  今回はビジネス誌「天下雑誌」の「金メダルサービス大賞」で、不動産仲介業者として2年連続で首位となった信義房屋の周俊吉董事長をご紹介します。

 信義房屋は台湾に351支店、中国に81支店、日本に1支店を展開する台湾最大手の不動産仲介業者です。董事長である周氏は、企業にとって最も重要なのは、顧客と社員を大切にすることという信念の持ち主です。「企業が金儲けのことばかりを考えていたら、社員も金儲けのことばかりを考えるようになり、社内でも社外でも衝突が起こりやすくなる。しかし、企業がまず顧客のために何ができるかを考えるのであれば、社員も同じように考えるようになり、結局は企業に利益をもたらして永続的な経営につながる」という言葉からは、まさに社名の通りの「信義」という言葉が浮かびます。

 周氏は、この信念を社員に共有させることに力を注ぎました。新人採用は、就職経験のない新卒にこだわりました。入社後最初の半年間は訓練期間として4万台湾元の給与を保証した一方、業績ボーナスはなしとしました。「ボーナスなしで社員にやる気が起きるのか」という批判もありましたが、周氏はこの期間に、賃金のためではなく買い手と売り手に満足してもらえる達成感や喜びを感じる人材となることを期待しました。訓練期間終了後の基本給は2万元程度に落ちますが、成約件数や成約額に応じてボーナスを出して、社員のやる気を引き出しました。

信頼性重視、逆境で成長

 1989年より大金をかけて会計や情報通信のシステムを導入、不動産仲介業者として初めて「物件概要書」の作成にも取り組みました。パソコンやインターネットの普及が十分でなかった当時、概要書1部の作成には1週間の時間と5,000元の費用がかかりました。また不動産取引における成約率は平均で4件につき1件。1件の成約で得られる手数料を20万元とした場合、まず4件分の概要書を作成するだけで2万元(手数料の10%)の費用がかかる上、概要書が完成するまでの間はその物件を販売できないデメリットもありました。そのため、少しでも早く買い手を見つけたい売り手が、他の仲介業者に委託することもありました。それでも周氏は、「概要書を作らなければ成約までの時間を短くできるが、物件に欠陥があったなどと買い手が後で不満を訴えてきたりしたら、担当者は対応に追われてしまい他の取引を進められなくなる」という考えから、概要書作成のための時間と費用を惜しみませんでした。

 信義房屋は、不動産市場が好調だった89年当時、他の仲介業者が大きく業績を伸ばす中で、損益均衡がやっとという状態でした。しかし不動産景気が急激に悪化した翌90年には、他社が売り上げを落とす中、優秀な人材に加え、堅実な会計および情報通信システム、概要書を付けたことで前年比で50%増収の大幅成長を遂げました。周氏はまた、不動産仲介業者の立場を悪用して買い手から安く手に入れた物件を高く売りつけて利益を得るような社員は解雇するなど、顧客の信頼を失う行為には厳しく対処しました。

新アイデアを続々導入

 92年からは水漏れ保証、96年には業界で初めて契約履行保証を物件に付けて販売するサービスを開始。07年には物件に放射能汚染材などの建材を使用していないことを証明する保証も付けることで、業績をさらに伸ばしていきました。業界で初めてパソコンや携帯電話を使って物件の閲覧や情報提供を行ったのも信義房屋でした。

 周氏は常に新しいアイデアを取り入れて信義房屋を業界トップへと成長させました。その躍進の基盤になったのは、「顧客と社員のことを考えてから利益を考える」という「信義」重視の経営理念だったのです。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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