記事番号:T00000054
●労退新制の対応策2 人件費増加への対応策
労退新制の施行により企業側は人件費が増加する事になります。
普通に導入すれば、過去に労働基準法の退職金規程による積立てをしていた企業で最低6%、していなかった企業で最低8%(労保局6%以上+中央信託局2%以上)の人件費アップとなります。
利益の出ている企業でしたら、人件費アップ分をそのまま受け止めるのが、従業員のモチベーションの関係もあるので一番良い方法だと思います。
そうは言っても、人件費アップで経営が厳しくなるという企業には以下の方法(*人件費抑制策 図表参照)があります。
ここで大事な事は「赤字にしてまで人件費をアップする必要はない」と言う事です。
世界中どこの国でも「賃金を下げてはいけない」という法律はございません。
労資が協議の上、賃金を下げる分には全く問題はないのです
上記に掲載した方法以外では、
1. 7月1日以前に労働契約を終了させ、1日以降に再雇用する。
2. 勤続年数を1年につき1ヶ月分で買取る。
3. 全員を人材派遣会社に移籍させ、そこから派遣してもらう。
4. 社員全員と委任契約を結ぶ。
5 . 7月1日以降グループ企業の中でローテーションを行い、旧制度分の積立てをしない。
等、様々な方法を採っている台湾企業もありますが、これらは全て違法行為として処罰されます。
人件費に関連した事項で日系企業からされるご相談に「離職金規定(自願退職規定)」を今後どう処理するかという問題があります。
これについては、「発展的廃止」という形で廃止する事をお勧めしております。
以上の通り、労退新制は企業経営へ大きな影響を及ぼす制度ですが、今回の制度施行を問題点ではなくチャンスと受け止め、利用する方法を考える事をお勧め致します。
例えば以下の様な考え方ができます。
余剰人員の削減の理由ができる →6%の人員を削減する
成果主義人事制度への移行に対する抵抗が少なくなる →利益分配による賞与は賃金ではない為、6%の積立て対象外となる
個人別の賃金格差がつけやすくなる
→利益分配による報奨金は賃金ではないが、個人差がなければ賃金と見なされる
将来発生する不確定なコストに対するリスクが減る
→旧制度の退職金規定においては、正確な将来の退職金積立額は予測不可能であり、流動率の低い企業は将来大きな負担を強いられる事になっていたが、今後は確定拠出型の為、計画経営が行いやすい。
7月1日以前に在籍している社員は、今後転職する可能性が低くなるので、腰を据えて人材育成に投資できる
毎年のベースアップを無くしやすい
→台湾のインフレ率は低く、ベースアップは必要ない時代になってきた。
ワイズコンサルティング 吉本康志