記事番号:T00000164
● 人材育成1
在台日本人経営者の皆様から「わが社の台湾人社員の業務レベルは低い」「わが社の台湾人幹部は幹部としてのスキルが不足している」等の嘆きをよくお聴き致します。
これは台湾人が日本人より能力が劣っているということではありません。
まず、日本でもほとんどの社長は社員に対し同じ事を思っています。
次に、台湾人は業務上の知識(例:セールスマンの商品知識等)は学ぶ機会はあっても、直接業務に関係ないが重要なスキル(例:ビジネス基本動作、マネジメントスキル、マーケティングスキル、企画力等)まで学ぶ機会はほとんど無い状況だったのです。
例えば一般的な日本の企業であれば、ほとんどの会社が新入社員研修を提供し、そこで「あいさつ」や「報告連絡相談」等の基本とビジネスマナーを集中的に教えています。
1年後にはフォロー研修、その後は中堅社員研修、監督者になれば監督者研修、
管理者になる頃には管理者研修…と会社が研修機会を提供し、従業員はそれに参加する事によりスキルや意識が向上する仕組みになっています。
もう一つ、従業員側の意識の問題もあります。
一昔から台湾人(特に若い人)は「眼高手低」が多いと言われています。
「眼高手低」とは「簡単な事もできないのに眼は高いところを見て偉そうに言う」というような意味です。
今回はそんな事例をご紹介致します。
<事例5>
ある日、弊社に米国の有名大学のMBA(経営学修士)を取得した台湾人が採用面接に来ました。
事前の採用試験の段階で、知識レベルでは合格していたので、面接試験では「知識を活用できる智恵があるか」「コンサルタントになる為に努力できるか」を中心に確認していました。
まず、簡単な問題を出してみたのですが、彼もよくいる台湾人と同じで「暗記力はあるが、創造性がない」タイプだった為、あまり良い回答は考えつかなかったようでした。
次に、「弊社では隔週の土曜日を研修日にしていますが、それ以外でもMBAで勉強していた頃と同じくらい自分で努力を続けていかなければ、コンサルタントにはなれませんよ。」という事を話しました。
そうすると彼は「私は有名大学のMBAを持っているのですよ」と言ってきたので、「MBAの資格は自動車の運転免許を手に入れただけです。自動車免許を手に入れたからといってレースで優勝できるとは限らないでしょう?」と説明しました。
すると彼は「私は努力して優秀な成績で卒業しましたので、今後努力するつもりはありません。私の能力を使いこなせるかどうかは、社長である貴方の能力ではないのですか?」と言ってきました。(台湾人がよく使う理屈です)
面接はここで終了しました…
<解説>
弊社で行っているコンサルティングは「知識を売る」「経験を売る」程度のレベルではなく「分析結果から知識・経験を総動員し、クライアント特有の問題解決法を見つけ出し、実現する」レベルです。
ですから、MBAの知識があろうが、有名企業の管理職の経験があろうが、クライアントの問題を解決できなければ、意味がないのです。
知識や経験も大切ですが、これらは努力で補える事ができます。
私は「今後どれだけ努力できるか」を最優先して人材を選んでいますが、若い台湾人は「眼高手低」の人が多いのが現状です。
ワイズコンサルティング 吉本康志